落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
ホミが後ろを振り返り言う。その表情はなにか言いたげで、面白がっているようでもあった。きっと昨日の「お姉ちゃんがめちゃくちゃ綺麗だったから、好きになったんじゃないかなあ」という、絶対にあり得ないことを考えているのだ。
「え? 昨日は王様が来ていたのかい?」
「そうよ、お兄ちゃん。王様ったら、お姉ちゃんが綺麗だからぽーっとしちゃって。すごく面白かったんだから」
ホミは楽しげに笑った。しかし、私は笑えない。なんの根拠もないことを断言されても困る。まかり間違ってヴィーにそんな話が伝わったら、気分を害するかもしれない。
「王様は感情がわかりやすいからね。それで、今日も来るって?」
「うん! お姉ちゃんに『明日もまた来い』って言ってたよ!」
明日もまた来い、の部分に若干声真似を入れながら、ホミは興奮して語る。
そろそろ止めたほうがいいかしら? こんな町中で、面白おかしくありもしないことを吹聴するのはよくないと思う。少なくとも、私はとても恥ずかしいから、やっぱりよくないと思うわ!
「ち、ちょっと、声大きすぎ……早く救護所へ向かいましょう!」
「あっ、待ってよー! お姉ちゃん!」
早足で駆け出した私を、慌ててふたりが追いかけてくる。暗くなりかけた道を、月に照らされた大きな影と小さな影ふたつ。重なって離れてを繰り返しながら、一路、救護所へと向かうのである。
「え? 昨日は王様が来ていたのかい?」
「そうよ、お兄ちゃん。王様ったら、お姉ちゃんが綺麗だからぽーっとしちゃって。すごく面白かったんだから」
ホミは楽しげに笑った。しかし、私は笑えない。なんの根拠もないことを断言されても困る。まかり間違ってヴィーにそんな話が伝わったら、気分を害するかもしれない。
「王様は感情がわかりやすいからね。それで、今日も来るって?」
「うん! お姉ちゃんに『明日もまた来い』って言ってたよ!」
明日もまた来い、の部分に若干声真似を入れながら、ホミは興奮して語る。
そろそろ止めたほうがいいかしら? こんな町中で、面白おかしくありもしないことを吹聴するのはよくないと思う。少なくとも、私はとても恥ずかしいから、やっぱりよくないと思うわ!
「ち、ちょっと、声大きすぎ……早く救護所へ向かいましょう!」
「あっ、待ってよー! お姉ちゃん!」
早足で駆け出した私を、慌ててふたりが追いかけてくる。暗くなりかけた道を、月に照らされた大きな影と小さな影ふたつ。重なって離れてを繰り返しながら、一路、救護所へと向かうのである。