落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 救護所の扉を開けると、そこにはもうすでに、破願するヴィーがいた。
 彼は振り返るや否や入り口に駆けてきて、私たちの進行を塞ぐように立ち塞がった。
「おお、今日も来てくれたのだな!」
 昨夜「絶対来い」って言ったのは誰ですか? と、救護所の誰もが思ったに違いない。そんな、全員の微妙な表情をものともせず、ヴィーは捲し立てる。
「さあ、こっちに来て座れ。俺の横に」
「あ、あの、先に用事を済ませてしまいたいのですが」
「用事? ああ! 薬草茶か」
「はい……それもありますが」
 言いながら、私は手に持った袋を開けて見せた。
 ヴィーは大きな背を屈め、中を覗き込み、直後、首を捻った。
「これは……なんだ?」
「私が作ったアミュレットです。身に付けていると、少しだけ能力が上がる効果があって。怪我をされた獣人の方たちのお守りにでもなればと、作成したのですが」
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