落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「そうでしょ? パトリシアお姉ちゃんが心を込めて作ったの! きっと、すごい力があるよ」
「ああ、そうかもしれないな。優しい魔力の流れを感じる。これは、聖なる力の一端……そうだよな、ティアリエス」
「ええ、そのようです。獣人が魔術を使うのも驚きですが、まさかそれが聖なる力とは」
 ヴィーとティアリエスは顔を見合わせて驚いている。
 そういえば昨日、獣人や人間が魔術を使うのはすごく難しいってホミが言っていたわ。だからこんなに驚いているのかしら? でも、それにしては大袈裟に驚き過ぎのような……。
「パトリシアは聖なる力が使えるのですか?」
 ティアリエスが振り向き尋ねた。
「えっ……と、聖なる力とは、聖属性魔術のことですか?」
「聖属性魔術という呼び名は、人間世界のものですね。私たち幻獣や獣人は聖なる力と呼びます。自然から加護を受けた力で、非常に扱いが難しいのですよ」
「そ、そうなんですか」
「私が知る限り、獣人に聖なる力を使うものはいません。その昔、幻獣にはいたらしいのですが、今は人間の中にごくわずかしかいないと聞いています」
 淡々と語るティアリエスは、窺うように私を見つめた。
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