落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 ホミは薬草茶を淹れる作業を開始し、リンレンはティアリエスの治療助手として動き始めた。ヴィーは広い救護所の中を真っ直ぐ進み、やがてあるベッドの前で足を止める。そこには、他の獣人よりも怪我の酷い男性がいた。
「ファル、具合はどうだ?」
「ああ、王様。大丈夫です! 大したことありませんよ……あたた……」
 ファルと呼ばれたライオンの耳を持つ青年は、急いで起き上がろうとし、腕を押さえて顔をしかめた。彼の腕にはきつく包帯が巻かれ、その包帯には血が滲んでいる。どれほど深い傷だったのか、想像するだけで、胸が傷む。
「おい、無理をするな。お前は一番重症なんだぞ」
「平気ですよ。明日には警備に復帰するつもりですからね。心配しないで下さい!」
「全く……言うことを聞かない奴だ。まあいい、お前に紹介しておこう、ウェアキャットのパトリシアだ」
 ヴィーは私の肩を掴むと、グイッと前面に押し出した。
「ホミとリンレンの親戚でな、昨日バーディアにやって来たそうだ。魔術の心得があるらしく、警備の獣人たちにアミュレットを作ってくれたのだ」
「アミュレット?」
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