落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 瞬間、全てが腑に落ちた。ヴィーは自分もアミュレットが欲しかったと。でも、世界最強の竜に、アミュレット(お守り)なんて必要かしら?
 自分の力だけで全てを解決してしまいそうだけど。
「アミュレット、欲しいのですか?」
「うん! 欲しい! 作ってくれ!」
 ヴィーは間髪入れず答えを返してきた。その言葉を待っていた、というような表情がなんとも子どものようで面白い。
 竜だというから、尊大で怖い人だと思ったけれど、話してみると案外気さくで大らかな感じがする。でも、人間嫌いだからあまり気を許すのはよしておこう。
「わかりました。では、またあとでいいですから、お好みの色とか入れたいモチーフ、込めたい願いなど教えて下さい」
「よし! 考えておこう」
「お願いしますね。それで……ファルさん?」
 ご機嫌になったヴィーから目を逸らし、もう一度ファルに話しかける。
「うん? なんだい?」
「怪我の治療をさせていただけませんか? ある程度の傷なら私の治癒魔術で治るかもしれません」
 とはいえ、私の力では一日にひとりを治すのが限界。だから、一番怪我が酷いファルだけでも治そうと考えたのだ。
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