落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「ええっ! パトリシアさん、治癒も出来るのか? 驚いた……」
「俺もだ。そこまでの素養があったとはな」
 ファルとヴィーは同時に叫んだ。
「あの……そんなにたいしたことないんです。一度力を使えば、くたくたになってなにも出来なくなってしまいますし……落ちこぼれなんですよ」
「落ちこぼれてなどいない! 治癒が出来るだけでもすごいぞ! もっと誇るがいい」
 ヴィーの力強い励ましに、ファルも大きく頷く。その様子を見て、私は少し癒された。落ちこぼれだと思い込む卑屈な自分を、打ち消してくれるような温かさを感じて。
「ありがとうございます。では早速始めていいですか?」
「じゃあ頼みます。早く前線に復帰したいからね」
 拳を握って見せたファルに微笑み返すと、私は治療を開始する。手の平を患部に向けて意識を集中すると、自分の中の熱がゆっくり外に流れていく。熱が空気を伝いファルの怪我に到達すると、痛々しい怪我が時間をかけてゆっくりと塞がっていった。
「す、すごいな……傷が消えていく……」
「ああ。これは本当に聖なるちか……お、おいっ! パトリシア!」
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