落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「うんっ! あたし、パトリシアお姉ちゃん、大好き! 優しい匂いがするもん!」
 優しい匂い、とは? ホミの言葉に内心首を捻る。獣人は感覚が鋭いって言っていたけど「優しい」に匂いがあるのかしら? 人間の私にはまったくわからない感覚だけど、大好きなんて言われたら嬉しいわよね。
「あの……前から聞きたかったのですが、王様はなぜ人間をそこまで憎むのでしょうか? 僕も人間は好きじゃないけど、中にはいい人もいるんじゃないかって……」
 遠慮がちなリンレンの問いに、ヴィーは一瞬立ち止まった。背負われた私も、背後で固唾を呑んで答えを待つ。彼が人間を嫌う理由を知りたかったのだ。
「聞いて楽しい話ではないぞ」
「はい」
「いいだろう。昔、幻獣の数は今よりもっと多かった。獣人もだ。戦いを好まぬ俺たちの先祖は、人間と仲良くしようとしたが、その優しさに付け込んだ奴らに狩られ、数を減らしたのだ」
「そうなの……ですか?」
 リンレンとホミの足取りが重くなる。
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