落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「ああ。それをきっかけにドーランが出来た。一番強い竜族が、人間の王族に脅しをかけ、手出し無用の約束を結ばせた。それなのに、だ! 奴らは約束を破って戦争を仕掛けてきた! 人間はそういう種族なのだ。簡単に裏切り、簡単に騙す!」
 背中から、ヴィーの憤怒の感情が伝わる。
 人間の世界では、ヴィーが語った内容は知られていない。恐らく、彼のいう「昔」とは何百年、ひょっとしたら何千年も前のことで、文献も残っていないのかも……いや、そうじゃない。
 人間に都合の悪い事実を残したくなかったのだ。
 不戦条約が、そんな歴史に基づいて結ばれていたなんて……。
 驚きと同時に、どうしようもなく憤りを感じた。過去に辛い目にあった幻獣や獣人が、今また、同じような目に遭いそうになっているなんて許せない。
 やはりこの戦いは間違っている。
「そんな歴史があったなんて知りませんでした。王様の怒りももっともだと思います。で、でも、もしかしたら、人間の中には優しい人もいるかもしれませんよ?」
「そうだよ。みんなが悪い人じゃないと思うよ」
 宥めるようにリンレンが言うと、追随してホミが言う。
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