君にたくさんのありがとうを
「あっ……ごめん、2人とも。人待たせてたの忘れてた」
ギュッと抱き合って、涙が止まった頃、大事なことに気がついた。
「人って?」
「あ、もしかして神代くん?」
未奈ちゃんの言葉に頷く。
「本当に付き合ってるんだ、2人」
「そうなの……そろそろ行かなきゃ……!」
改めて付き合っていることを口にするのは、やっぱり恥ずかしい……
でもそんなことよりも待たせている神代くんが心配だ。
私が教室に戻ってきてから、かれこれ30分くらいは経っている。
もしかしたら帰ってしまったかもしれない。
でも、神代くんのことだから待っているかも……
「行きなよ、詩織」
「また明日話そ!詩織っ」
「うん、ありがとう!」
また明日と言えるのがとても嬉しい。
嬉しさのあまり、また涙がこぼれそうになった。
英里ちゃんと未奈ちゃんに見送られて、急いで教室を出た。
ごめん、神代くん。
廊下を全速力で走って、生徒玄関へ向かった。