君にたくさんのありがとうを



「神代くーん!」



生徒玄関で壁にもたれて待っている神代くんの姿が見えた。



「詩織ー!」



私の声に気づいた神代くんが私の方へと手を振った。



「本当にごめんっ、遅くなっちゃって……」



走ってきたせいで息が切れる。



「いいよ。ゆっくり息整えて?」



神代くんの言葉に甘えて、ゆっくりと深呼吸をした。


数回深呼吸をして、やっと息切れが治まってきた。



「大丈夫そう?」


「うん、ありがとう」


「じゃあ、帰ろっか」


「うん」



差し出された手を握る。


最初はとても緊張したけれど、最近は慣れてきて、自然と繋げるようになった。


神代くんと手を繋いで帰る帰り道は、とても幸せな時間だった。



「どう?浅倉と笹崎とはちゃんと話せた?」


「……へっ?」


「ごめん、盗みみようとしたわけじゃないんだけど、詩織がなかなか戻ってこなかったから様子を見に行ったんだ」


「そっか、そうだったんだ」



英里ちゃんと未奈ちゃんと話してきたことを知っていたから、また予知夢でも見たのかと思った。


もう見られなくなったって言っていたのに。



「随分と長く待たせちゃったよね、ごめんなさい」


「いいんだよ。それで、ちゃんと浅倉と笹崎とは話せた?」



神代くんは優しく聞いてくれた。




< 201 / 205 >

この作品をシェア

pagetop