裏側の恋人たち

美原さんを囲んで佐野くんと福岡先生と4人で1つのテーブルで夕食を食べながら午後からの取材の様子を聞いた。

「もともとうちのやっている僻地医療に対して好意的なメディアですから批判的な内容にはならないと思います。役場の方も同席してくれてましたし」

「それにスタッフの1人が往診のナースの水野さんに一目惚れしちゃったみたいですよ」

佐野くんが面白そうに報告してくれた。
ほうほう、それはそれは。

離れたテーブルで仲間たちと食事をとっている水野さんに視線を送る。
彼女は4年目だったかな。綺麗な子なんだよね。
浮ついた感じもないからわたしも好き。

「うん、一目惚れするのわかるわ。綺麗な子よね」

「綺麗な《《子》》って。はぁ。浜さんからみたらみんな子ども扱いですね。自分だってそんな年寄りでもないくせに」

佐野くんが残念な子を見るような目でわたしを見る。

残念ながらわたしがずっと年上であることは間違いない事実ですけど。

「佐野くんっていくつだっけ」

「俺は24っす」

「はぁー、9こ下ね。君が中学生の時にわたしはもう働いてたよ。もっと言うなら君が幼稚園の時だってわたしはもう高校受験の年だったし。子どもよ、子ども。
幼稚園児から見た高校生って大人だったでしょ」

「でも、親子には無理がありますし。精々姉って感じですかね。でも子どもの時はともかく、大人になってからの9個上って気が合えば友人としていけますよね?」

「うん、それはそうね。仕事とか絡まなければ」

「じゃあ俺と浜さんも美原さんも東京に戻ったら友達でいいですよね」

ああそういうこと?
まあ別に問題ないけど。美浜さんを見ると同意するように微笑んでくれた。

「おいおい、佐野くん、俺は?」

福岡先生が不満そうに話に入ってきた。
そういえばもう1人いたっけ。

「先生も俺の友達の括りでいいんですか?」

佐野くんがまさかという顔でずいぶん驚いている。
まあそうよね。いきなり一回り上のドクターが友達って。

「もちろんいいよ。ちょっとオジサンで悪いけど、よろしく」

「ああ、えっと、よろしくお願いします」

ちょっと嬉しそうな福岡先生と戸惑いを隠せない佐野くんの対比がちょっと面白い。

「浜さん」
美原さんがにこりと笑う。
「私と浜さんも友達ですね。よろしくお願いします」

「もちろんです。よろしくお願いします。わー、嬉しい」

この年になると新しく同世代の友達が出来るって経験が少なくなってくるからかなり貴重だ。しかも違う業種のひとって存在もかなり嬉しい。

『仕事を離れたら友人』という関係が出来るとテーブルに流れる空気が和やかに変わったような。
仕事の話が終わったこともあって4人で雑談に花を咲かせていると、他のテーブルにいる曽根田さんのはしゃぐ声が聞こえてきた。

ああ、またかと思うと地味にメンタルにくる。
美原さんの前で福岡先生の分だけコーヒーを持って突撃してこないことだけはよかったけど。

彼女はお菓子を配って歩いていて、私たちのテーブルにもやってきた。

「これよかったらどうぞ。おいしいですよ」

私たちの目の前に栗まんじゅうが4個置かれる。
これはどう見てもおやつで福岡先生にもらったものと同じ。

「昨日買ってきたんです。あ、先生は昨日一緒に食べたからご存知でしょうけど」
ね、っと曽根田さんが福岡先生に微笑んで、先生はそれにちょっと困ったように笑みを返していた。

・・・・・・デート自慢なら他でやって欲しい。

「ありがとう」「ごちそうさま」
口々にお礼を言ったけれど、曽根田さんはここのテーブルから立ち去る様子はない。
他にはもう配らないのか、もう配り終わったのか。

「福岡センセイ」
満を持してなのか、ひと呼吸置いたのはわざとなのか、曽根田さんが満面の笑みで先生に話しかけた。

始まったかーーーー


< 101 / 136 >

この作品をシェア

pagetop