裏側の恋人たち
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「ほんっとに申し訳ありませんっ」
身体を90度に折り曲げるナースの松江さんに「いいの、いいの。こっちは大丈夫だから気にしないで」と満面の笑みで応えるわたし。
Cチームのナースの松江さん、午前の健診中に転倒しそうになった高齢者さんを助けて自分がよろけ、右足首を捻挫してしまった。
先ほど本部に緊急連絡が入り私がCチームに合流、代わりに松江さんが本部のホテルに戻り今日は休養。明日からは座って出来る範囲で福岡先生のお手伝いをすると決まったのだ。
松江さんは4年目のナースでリーダー業務は任せられないけれど、福岡先生の補助としてなら十分な戦力になると思う。
私は本部からも曽根田さんからも解放だーーーー。
勿論、ひとの不幸を喜んではいけない。
幸い松江さんは骨に異常なく、テーピングだけで大丈夫という軽症だった。
だけど、午後は僻地の集落内を歩いたり、入浴介助をすることもあるからどうしても安静は保てない。
なので私が手を挙げたのだ「交代します!!!」と。
緊急連絡用に準備していた車を運転して現場行くと、Cチームのドクターとナースによって松江さんの治療は済んでいて私と交代するのを待っていた状態だった。
申し訳ないと謝る松江さんに何度も気にしなくていいのよと言ってしまう。
本当にこちらのことは気にしなくていいのだから。
それよりも松江さんの足の方が心配だ。所属先の施設にも連絡しなければと思いだし、本部に追加連絡をした。
もちろん、本部はとっくに動いてくれていたのだけど。
今回の出張、よくよく他人の捻挫と縁があるらしい。
増本主任が捻挫をしなければここに私が来ることにはなっていなかったし。
しかし、本部を離れることが出来たのはよかった。
これで日中本部に福岡先生と二人きりという状況は回避。
必然的に2人で隣り合って食べていた昼食も夕食も回避。
福岡先生の隣にいないということは曽根田さんの夕食時の突撃も回避。
そして曽根田さんはAチーム所属なのでCチームにはいない。
全て回避!
Cチーム合流、バンザイである。
現場の午後の仕事を終えてホテルに戻り、本部に行くと今日の午後は休むことになっていたはずの松江さんがデスクワークをしていた。
「松江さん、大丈夫なの?」
「あ、浜さんお帰りなさい。痛みもないし、福岡先生もやらなくていいって言ってくれたんですけど、寝てるのもイヤだったんでこっちで働かせてもらうことにしたんです。出来ることは少ないんですけどね」
「ううん、松江さんがいてくれたら助かると思う。見たところ私よりずっとパソコン操作早いし・・・・・・」
「私が出来る作業は限られているので先生には迷惑をかけてますけど。今もプリンターの用紙補充に荷物置き場に取りに行ってくださってて」
「あー、健康な私相手でも先生は用紙とか取りに行ってくれるから、気にしなくてもいいかも」
いつも申し訳ないとは思いつつ甘えてました。
肩をすくめていると、福岡先生が紙の束を持って戻ってきた。
「浜さん、お疲れさま。Cチームは問題なかった?」
「大丈夫でした。明日からの松江さんのシフトに私がそのまま入っても問題なさそうです」
元々現場大好きですし。
「そう、じゃあよろしく」
「こちらは大丈夫ですか?」
全然大丈夫だと思うけど、社交辞令なので一応聞いてみる。
「うん、そうだね。松江さんがよく働いてくれるから何とか回りそうだよ。ただ、最終日の金曜午後は浜さんに戻ってきて欲しいなと思ってるんだけど、大丈夫かな」
「勿論です。最終日は報告書を纏めないといけないし、ここの片付けもあるし、おそらく現場よりこっちの方が大変ですね」
うん、さすがに報告書はリーダーの私が書かないといけないし。
二日間は解放してもらえるのだからありがたいと思わねば。
それに金曜夜の打ち上げではどうせリーダー二人が離れて座ることは出来ないだろうし。それはもう仕方ない。
その場の雰囲気で移動可能になれば速攻席を離れよう。
「わかりました。金曜はこちらに戻ります」
「よろしくね。撤収作業は僕と松江さんでやるから浜さんは報告書に集中でいいよ」
「わかりました」
「松江さんも足のことがあるから無理しないで、詰め込むだけでいいから。荷物は運ばないで僕を呼んで」
「ありがとうございます、福岡先生」
松江さんはうるうるしそうな勢いで両手を合わせているし。
ありがたい。
やっぱり優しいんだよね、福岡先生って。
先生が一番大変なのに。
でも、なぜだか少しもやもやっとする。
うーん、なんだろう。このモヤモヤは。
「ほんっとに申し訳ありませんっ」
身体を90度に折り曲げるナースの松江さんに「いいの、いいの。こっちは大丈夫だから気にしないで」と満面の笑みで応えるわたし。
Cチームのナースの松江さん、午前の健診中に転倒しそうになった高齢者さんを助けて自分がよろけ、右足首を捻挫してしまった。
先ほど本部に緊急連絡が入り私がCチームに合流、代わりに松江さんが本部のホテルに戻り今日は休養。明日からは座って出来る範囲で福岡先生のお手伝いをすると決まったのだ。
松江さんは4年目のナースでリーダー業務は任せられないけれど、福岡先生の補助としてなら十分な戦力になると思う。
私は本部からも曽根田さんからも解放だーーーー。
勿論、ひとの不幸を喜んではいけない。
幸い松江さんは骨に異常なく、テーピングだけで大丈夫という軽症だった。
だけど、午後は僻地の集落内を歩いたり、入浴介助をすることもあるからどうしても安静は保てない。
なので私が手を挙げたのだ「交代します!!!」と。
緊急連絡用に準備していた車を運転して現場行くと、Cチームのドクターとナースによって松江さんの治療は済んでいて私と交代するのを待っていた状態だった。
申し訳ないと謝る松江さんに何度も気にしなくていいのよと言ってしまう。
本当にこちらのことは気にしなくていいのだから。
それよりも松江さんの足の方が心配だ。所属先の施設にも連絡しなければと思いだし、本部に追加連絡をした。
もちろん、本部はとっくに動いてくれていたのだけど。
今回の出張、よくよく他人の捻挫と縁があるらしい。
増本主任が捻挫をしなければここに私が来ることにはなっていなかったし。
しかし、本部を離れることが出来たのはよかった。
これで日中本部に福岡先生と二人きりという状況は回避。
必然的に2人で隣り合って食べていた昼食も夕食も回避。
福岡先生の隣にいないということは曽根田さんの夕食時の突撃も回避。
そして曽根田さんはAチーム所属なのでCチームにはいない。
全て回避!
Cチーム合流、バンザイである。
現場の午後の仕事を終えてホテルに戻り、本部に行くと今日の午後は休むことになっていたはずの松江さんがデスクワークをしていた。
「松江さん、大丈夫なの?」
「あ、浜さんお帰りなさい。痛みもないし、福岡先生もやらなくていいって言ってくれたんですけど、寝てるのもイヤだったんでこっちで働かせてもらうことにしたんです。出来ることは少ないんですけどね」
「ううん、松江さんがいてくれたら助かると思う。見たところ私よりずっとパソコン操作早いし・・・・・・」
「私が出来る作業は限られているので先生には迷惑をかけてますけど。今もプリンターの用紙補充に荷物置き場に取りに行ってくださってて」
「あー、健康な私相手でも先生は用紙とか取りに行ってくれるから、気にしなくてもいいかも」
いつも申し訳ないとは思いつつ甘えてました。
肩をすくめていると、福岡先生が紙の束を持って戻ってきた。
「浜さん、お疲れさま。Cチームは問題なかった?」
「大丈夫でした。明日からの松江さんのシフトに私がそのまま入っても問題なさそうです」
元々現場大好きですし。
「そう、じゃあよろしく」
「こちらは大丈夫ですか?」
全然大丈夫だと思うけど、社交辞令なので一応聞いてみる。
「うん、そうだね。松江さんがよく働いてくれるから何とか回りそうだよ。ただ、最終日の金曜午後は浜さんに戻ってきて欲しいなと思ってるんだけど、大丈夫かな」
「勿論です。最終日は報告書を纏めないといけないし、ここの片付けもあるし、おそらく現場よりこっちの方が大変ですね」
うん、さすがに報告書はリーダーの私が書かないといけないし。
二日間は解放してもらえるのだからありがたいと思わねば。
それに金曜夜の打ち上げではどうせリーダー二人が離れて座ることは出来ないだろうし。それはもう仕方ない。
その場の雰囲気で移動可能になれば速攻席を離れよう。
「わかりました。金曜はこちらに戻ります」
「よろしくね。撤収作業は僕と松江さんでやるから浜さんは報告書に集中でいいよ」
「わかりました」
「松江さんも足のことがあるから無理しないで、詰め込むだけでいいから。荷物は運ばないで僕を呼んで」
「ありがとうございます、福岡先生」
松江さんはうるうるしそうな勢いで両手を合わせているし。
ありがたい。
やっぱり優しいんだよね、福岡先生って。
先生が一番大変なのに。
でも、なぜだか少しもやもやっとする。
うーん、なんだろう。このモヤモヤは。