Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜

一花が注意すると、彼は口を尖らせて「だって、何か胡散臭い奴だし」と言う。まるで拗ねている子どものようだ。

桜士がもしも部下に同じ態度を取られていたら、怒鳴り付けていたかもしれない。だが今は優しい本田凌だ。

「四月一日先生、僕は気にしていませんよ。大丈夫です。続けてください」

一花は軽く頭を下げ、ヨハンはツンとした態度でそっぽを向いていた。その時、桜士の背後から「四月一日先生！」と声をかけられた。

振り返るとそこには、ショートヘアの背が高めの女性が手を振りながら近付いてくる。その女性の背後には、白衣を着た二人の男性が立っていた。

「折原先生！」

一花もニコリと笑い、彼女に近付いていく。女性の名前は折原藍（おりはらあい）。産婦人科医として勤務している二十八歳だ。

「そちらの方は？新しい先生？」

一花に藍が訊ね、「新しく救急に来てくれたんです！」と嬉しそうに一花が話す。一花の隣に桜士は笑みを浮かべて移動し、胸ポケットにつけた名札を見せながら自己紹介をした。