Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜
「この整った顔は、仕事には不向きだな……」

そう冷たく呟き、歯磨きなどを済ませ、かばんを手に家を出る。ドアの閉まる音、鍵がかかる音がやけに大きく聞こえた。

腕時計を見れば、まだ七時半にもなっていない。だからか、まだ朝を迎えたばかりのこの街はまだ静かだ。道路にはたまにジョギングをする人や犬の散歩をしている人がいる。

「今日もここは平和、か?」

車に乗り込みながら桜士は呟く。エンジンの音が響いた。

車を走らせて桜士が着いたのは、警視庁だ。桜士の職業は警察官である。決して、表に出ることはできないが。

公安警察という存在はご存知だろうか?交番で市民の落とし物を拾う警察官や、ドラマに登場する刑事とは全く違う存在である。

通常の警察官は、殺人事件や誘拐事件、詐欺やひき逃げなど事件が起こった際に犯人を逮捕するために捜査をする。だが、公安警察が相手にするのは普通の犯罪者ではない。テロリストやスパイなど、日本の安全を脅かす存在と日夜戦っているのだ。

「おはようございます」
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