Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜
「わ〜!おいしそうですね!」

完成し湯気を立てている鍋を目にすると、桜士の中で食欲が湧いてくる。一花が全員分の箸と皿を配り、ヨハンがお茶を淹れる。全員が椅子に座り、庄司が言った。

「それでは、本田先生が来てくれたことにーーー」

庄司の言葉を遮るかのように、ピリリリリと音が鳴り響く。庄司が持っているPHSからだ。嫌な予感しかしない。

「はい!……四十九歳男性、くも膜下出血疑いですね。わかりました。搬送、受け入れます」

庄司がPHSの電源を切ると、今度は一花の持っているPHSが鳴り始める。一花は鍋を残念そうにチラリと見た後、PHSに応答した。

「はい!……十歳女の子、誤って漂白剤を飲んでしまった。わかりました。搬送、受け入れます」

一花がPHSの電源を切ると、今度はヨハンの持っているPHSが鳴り始める。ヨハンはすぐに応答した。

「はい!……八十歳男性、餅が喉に詰まってCPA(心肺停止)状態。わかりました。搬送、受け入れます」

PHSの電源を切った後、桜士はもちろん三人も立ち上がる。鍋は数時間お預けだ。もうすぐやって来る患者さんの命が最優先なのだから……。
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