離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 勤務中の、必死でお客さまに応対している彼女の姿が浮かんできて思わず頬が緩んだ。空港では本当に大勢の人間が働いている。パイロットもCAもJG航空所属の人間だけでもかなりの数だ。だから彼女が俺を認識してくれている可能性は低いかもしれないけれど……俺は彼女を知っていた。いや、それどころか無意識に広い空港でいつも彼女を探していた。父と親しくしている慶一郎さんの姪だからという理由だけではない。

 父がその場を仕切りはじめてからも俺の目は彼女に釘づけだった。
 ほんのりピンクがかった柔らかそうな肌、奥二重の涼やかな目元、小さめで上品な唇。日本人らしい繊細な美しさに心惹かれる。
 俺の熱い視線に気がついたのか、彼女がチラリとこちらを向く。目が合うと花がほころぶような笑顔を見せてくれた。この瞬間にどうしようもなく彼女が欲しいと思った。

「浜名美紅さん。君さえよければ俺と結婚してもらえませんか?」

 気がついたらそう口走っていた。

 まだ場も温まっていなかったし彼女がどんな気持ちでこの場に臨んでいるのかも確かめていない。こんなタイミングで言うべき言葉ではなかったと思うが……後悔はなかった。一刻も早く彼女に俺の気持ちを伝えたかった。ほかの誰かに奪われてしまう前に――。うちの父の強引な押しもあって俺たちの結婚話はどんどん具体化していった。

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