離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 一月のとある日、俺は朝から迷っていた。これから浜名を迎えに行ってブライダルプランナーとの打ち合わせのために披露宴会場のホテルに向かう予定なのだが――。

(俺の車に乗るのは嫌だろうか?)

 婚約者という立場を得たが、彼女にとって俺はまだよく知らない男でしかないだろう。それも十歳も年上だ。タクシーにするべきか迷ったが思いきって車で迎えに行った。少しずつでも距離を縮めたいと思ったから。

(とはいえ、いきなり恋人面をするのも図々しいよな)

 女性との関係でこんなに思い悩むのは初めての経験かもしれない。ハンドルを握りながら俺は自嘲するような笑みをこぼした。
 彼女のマンションまで迎えに行くとすでに浜名は外に出て待っていてくれた。

(寒いから部屋で待っていてくれと言ったのに)

 でも、その律儀なところが彼女らしくてますます愛おしくなった。口元でこすり合わせている彼女の両手が寒さで赤くなっているのを見て温めてやりたいと思った。もちろんまだ早いだろうから実行には移さないが。

「今日は冷えるしあまり歩かなくていいように車で行こうと思ったんだが」

 やや言い訳がましく言った俺に彼女は優しいほほ笑みを返してくれる。

「お気遣いありがとうございます! あっ、ちょっと待ってくださいね。靴が汚れていないか確認するので」

 その場にかがみこみ彼女は自分の靴をチェックしはじめた。俺は笑って彼女に伝える。
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