離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「はい。小さい頃から憧れていました。シャンと伸びた背筋が綺麗でかっこよくて! 英語もペラペラで、私もあんなふうになりたいなって」

 言葉にするとより、自分の気持ちが昂るのを感じた。私は夢中で彼に話をしていた。

「そうだな。俺から言えることは――」

 私の話を聞き終えた彼は優しい笑みで言う。

「パイロットもCAも臆病な人間のほうが向いている、と俺は思う」

 私は驚きに目を白黒させる。

「本当ですか? どうして?」

 大勢の命を預かって高い空を飛ぶのだ。勇敢な人間でなくては務まらないと思っていた。

「少なくとも俺は結構怖がりだよ。ちょっと霧が出ているだけでも飛行機の安全に影響がないかとドキドキするし、自分のミスで墜落したらどうしようと眠れなくなる日だってある」
「そうなんですか?」

 こんなに大人で完璧に見える彼も眠れない日があるのかと思うと急に親近感が湧いた。

「あぁ。だから何度も何度も飛行機に不具合がないか確認するし、操縦についても一生懸命勉強する」

 彼はまっすぐに私の目を見て伝えてくれる。

「君が自分の欠点だと思っていることは実は長所かもしれないんだ。だから夢があるなら諦めないでがんばってほしいと思う」

 彼の言葉が胸に深く染み入っていく。あの事故のトラウマを乗りこえたいと、初めて本気で思えた。
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