離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 小柴さんの件はまだきちんと話せていないままだ。でも、もう必要ないとさえ思える。言葉がなくても彼の思いはしっかりと伝わってくる。私たちは同じ気持ちだ。

「愛してる」
「愛しています」

 同じ台詞をつぶやく声がぴったりと重なった。彼はふっと苦笑を漏らす。

「俺はパイロット失格だな。エンジントラブルが発生したあの一瞬は、美紅を守ることしか考えられなかった。君の笑顔のためだけに動いてた」
「……私も同じです。あの衝撃音を聞いたときは桔平さんの顔しか浮かばなかった」
「互いにまだまだ未熟だな。猛省しよう」
「はいっ」

 エンジン故障の原因は鳥が衝突するバードストライク、ファンブレードの疲労破壊、ほかにもさまざまな可能性を想定して調査が行われることになった。原因究明まではもうしばらく時間がかかりそうだ。

 結局、ふたりでゆっくり話をする時間が取れたのは事故から数日経ってからだった。
 夕食後、私たちはダイニングで向き合って話をする。

「DLC航空の小柴美玲? あぁ、少し前にミュンヘンステイだったときに向こうで会ったな」

 桔平さんは彼女を知っていることは否定しなかったけれど、付き合っていた過去はないと話してくれた。

「じゃあやっぱり夕菜たちの推測どおり、すべて小柴さんのついた嘘なのかな?」
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