離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
(でも、それは恋じゃない。私が好きな人はずっと――)

 桔平さんは少し拗ねたような目でこちらを見る。

「それに、俺と違って美紅と年も近い。君が彼のような男に惹かれるのは当然だと自分に言い聞かせようとした。でも、そうじゃなかったのか?」

 まっすぐに桔平さんが私を見つめる。

「私は……ずっと桔平さんに憧れていました。相手が桔平さんだったから縁談もお受けしたんです。この結婚は私の意志でした!」

 私の告白に桔平さんはしばし呆然とする。私はなおも続けた。

「桔平さん、教えてください。もしその誤解がなかったら私と本当の夫婦になってくれていましたか?」
「それは当たり前だろう。最初から離婚する気で結婚するやつがどこにいるんだ。見合いの席で君にプロポーズをしたときは俺の生涯をかけて君を幸せにする覚悟だったよ」

 桔平さんは前髪をくしゃりと乱して困惑気味に言葉を紡ぐ。

「でも……美紅は俺との結婚は本意ではなかっただろう? 式当日の夜、君はひとりで泣いていた。意に沿わない結婚がつらいのだろうとばかり――」
「あれはっ」

 本人に打ち明けるのはかなり恥ずかしいけれど勇気を出して私は正直に言った。

「き、期待してたんです。桔平さん、挙式のときはキスしてくれなかったけど……しょ、初夜だしもしかしたらって」

 それなのにキスどころか指一本触れてもらえなかった。こっそり涙を流すくらいは許してほしい。
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