偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
ーーどうしてそんなに必死なの? 唯一無二の大切な存在だから? それとも……。
恋は、不意に浮かんできた問いかけを大慌てで胸の奥底に想いと一緒に仕舞い込んだ。
ーー答えなんて決まってる。どうせ口にする勇気なんてないくせに、バカみたい。
自嘲じみた笑みが込み上げてくる。これ幸いとばかりに、恋は目一杯おどけて見せた。
「吃驚しただけだよ。なのにカレンってば慌てすぎ。それに何、その変わり身の早さは」
「……そりゃ、驚くに決まってるだろ」
対して秀は、心底安堵したように息を吐いた直後、ムッとした声を零した。
もうすっかり秀仕様の俺様口調に戻っている。
「カレンになったと思ったら、もう戻ってるし。どっかに切り替えスイッチでもあるんじゃないの?」
それを恋が茶化せば、秀はますますムッとした表情でむくれていく。
口調こそ違ってはいるが、こんな風に秀と言い合っていると、以前の親友カレンとの関係性に戻れたような気がしてくる。
言いようのない安堵感と懐かしさに、恋の胸はあたたかなもので満たされてゆく。
ーーこれなら大丈夫。唯一無二のふたりなら、これからもきっと上手くやっていける。
「切り替えスイッチ……って、俺をオモチャみたいに」
「いいねぇ。一家に一台秀くん。ほしいかも」
「ふざけんな。俺がどんなに心配したと思って」
そう思っていた矢先、唸るような苦しげな声音を震わせた秀にぎゅぎゅうっと胸に抱き寄せられたことで、またもやどこからともなく期待感が浮上してくる。
ーーせっかく、胸の奥底に仕舞い込んだっていうのに、どうしてそんな思わせぶりなことばっかりするの?
こんな感情は身勝手極まりないことだと自分でも承知している。
けれどもこれ以上妙な期待感に振り回されたんじゃ堪らないーー。