【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。
「っ……」
「彼女はすぐに病院に運ばれた。……幸いにも、なんとか一命は取り留めたんだ」
アユリの拳は少し、震えていた。
「俺もすぐに病院に駆け付けたよ。彼女は頭を強く打っていて、意識不明の重体だった。いつ何が起きても、おかしくないと医者は言っていたんだ。……それが何を意味するのか、俺にもすぐに分かった」
「……そんな」
「でも彼女は、なんとか危機を乗り越えて、一ヶ月後に目を覚ましたんだ」
そう、目を覚ましたんだ。……だけど。
「それで……どう、なったの?」
アユリは涙を一筋溢す。
「目は覚めたけど。……記憶喪失になっていた」
「記憶……喪失……」
俺はアユリの目から溢れた涙を、拭うことも出来なかった。
「彼女は事故に遭った時のことも、俺のことも、家族のことも、何もかも全部忘れていたんだ」
「家族……のことも……?」
「そうだ。 彼女は自分が誰なのかすら、覚えていなかったんだよ」
アユリは「そんな……。そんなことが……」と呟く。
「医者は事故に遭った際に頭を強く打ったことで、強いストレスがかかって記憶喪失になったんじゃないかって言っていたけど、まさか自分のことまで忘れるなんて……」