【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。
本当にあの時は、ショックだった。もうダメかもしれないって時に、目を覚ましてくれたことが奇跡だったからだ。
いつ何が起きてもおかしくないと言われていたからこそ、俺は本当に本当に嬉しかったんだ。
なのにまさか、記憶喪失になってしまうなんてな……。
「……それは、ショックだよね。特に家族が」
「彼女は記憶喪失になったことで、自分が誰かも分からない状態に苦しんでいた。自分の名前すらも分からない。ましてや、家族の顔も思い出すことが出来ないんだ。……本人が一番、ショックだったと思う」
それはきっと、間違いない。……だって彼女は。
「彼女は自分や家族を思い出す努力もした。 でも、思い出そうとすると頭が痛くなって思い出すことが出来なくなったらしい。 もちろん、事故の時のことも思い出せないままだったらしい」
「っ……ごめん、もう……私、聞くのが辛い……」
アユリは涙をボロボロと流し始める。
「アユリ……何も言わなくていいから、聞いてくれないか」
アユリは涙を流しながらも、静かに頷いてみせた。
「彼女はどう頑張っても、何も思い出すことは出来なかった。家族も俺も友人も、事故の後、彼女に一度も思い出してもらうことは出来なかった」