ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜

第14話 11月21日


 始業のチャイムが鳴る頃、蓮たちは廃トンネルに集っていた。

「うらら……!」

 驚いたように目を見張った紗夜が駆け寄る。
 その存在を確かめるように、少しためらいがちに触れた。

「心配かけましたわね」

「どういうことだ? どうやって冬真から逃げてきたんだよ?」

 蓮は戸惑いをあらわにする。

「桐生さんからは何も……?」

「聞いてねぇ。何かあったのか?」

「もしかして、今日いないこととも関係あるのかな」

 奏汰は眉を下げる。
 昨日、顔色の悪かった大雅の様子を思い出して嫌な予感を覚えた。

「取り引きのことはご存知?」

「取り引き……?」

 うららは、冬真の持ちかけた取り引きの全容と昨晩の出来事を明かした。

「わたくし、実は消音魔法を使って少しその場に留まっていましたの」

 踊り場の死角に身を潜め、見聞きしていた一部始終を告げる。

「マジかよ……。何か色々起こりすぎて理解が追いつかねぇ」

「大雅の奴はどうなったん?」

「ごめんなさい。わたくし、何だか怖くなって……その八雲さんたちが消えてからすぐに帰りましたの」

「……そっか」

「ただ、如月さんがああなった以上、絶対服従させられているということはありませんわ。佐久間さんが独断で記憶操作を行った可能性はあるけれど……」

 大雅が反動で倒れた時点で、いや、その前から助けに入っていればよかった。

 またも自分が絶対服従させられてしまうことを危惧してためらってしまった。

「何にしても、無事を確認してから離れるべきでしたわ」

「いや、そこまでの情報を掴んできてくれただけでもありがてぇよ。でも、ひとりで冬真のとこに犠牲になりにいくなんていう大雅の判断は許せねぇな……」

 危険な目に遭うことは分かりきっているのに、なぜひとりで背負ってしまうのだろう。
 仲間なのだから頼って欲しいところだ。

「桐生……」

 紗夜は顳顬に触れて呼びかけてみるものの、応答はない。

 それでも何度か繰り返していると、ややあって大雅の声が返ってきた。

「大丈夫……?」

『ああ、一応平気だ』
< 156 / 286 >

この作品をシェア

pagetop