ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜

 勢いよく起き上がった彼は、不満気な顔をしていたかと思えば、はたと一瞬動きを止める。

 すん、と奏汰の首筋に鼻を寄せた。

「おまえ、魔術師だな」

「……!」

 とっさに答えられなかったものの、もとより答えなんて求めていないようだ。

「あの“弱虫野郎”……最近、夜になるとロープなんかで手足縛ってんだぜ? 必死すぎて笑えるだろ」

「え……」

「ちょうどよかった。夜中に出歩けねぇから溜まってんだよ。なあ、おまえ殺していいか?」



     ◇



「もっかいその動画見してくれ」

 場所を屋上へと移し、蓮は言う。

 彼女は心底呆れたように、大げさなため息をついた。

「はぁ……おまえ、理解力なさすぎ。よく水無瀬さんに愛想尽かされないな」

「うっせ。おまえは二面性ありすぎだろ」

 雪乃は渋々ながら再生ボタンをタップする。

 ────動画内の風景は踏切、小春が消えた場所だ。

 画面にはしっかりと小春が映っていて、踏切の反対側には蓮もいた。

 ぱん! と唐突に手を打ち鳴らすような音が響くと、振り返りかけた小春の姿が消えてしまった。
 空間が歪んで祈祷師が現れる。

『おまえ、祈祷師だな? 小春を返せよ。どこにやったんだよ!』

『はいはい、うるさい。キミはあとでボクが……いや────呪術師にでも相手してもらってきなさいな』

 彼の手が蓮に触れると、ぱっと姿が消える。

『さあ、ミナセコハル。邪魔者は消えた。遠慮なくぶっ殺させてもらうよー』

 そう言うなり、消えたはずの小春が突如として現れた。

 ……少し動画を巻き戻す。
 彼女が消えている場面をよく見ると、地面に影があった。

 これは“影の魔術師”と同じだ。
 そこに消音魔法も合わせ、擬似的(ぎじてき)に消されていたようだった。

 何言か言葉を交わしたかと思うと、祈祷師が彼女を炎で包囲した。

 空中へ逃れたものの、あえなく何らかの異能によってその身体が分断されてしまう────。

「……っ」

 何度見ても、蓮は平静さを欠いてしまった。

()きつけた主犯のキミには楽な死に方させないよー。ボクたち運営側は“ルール違反者”に制裁を加えなきゃね』

 苦しむ小春に祈祷師が放ったその言葉は、さらなる疑問を呼び寄せた。

「ルール違反……?」

 いったい、何のルールに違反していたというのだろう。

 やがて、画面の中の小春が力尽きる。
 絶命した彼女に向かって祈祷師が手をかざしたところで、動画は終わっていた。

「なあ、このあとどうなったんだよ! 小春は死んだのか……? つか俺、ここで祈祷師と会った覚えなんかねぇぞ! 確かに小春は消えたけど」

「落ち着けよ」

「落ち着けるかよ! どうなってんのか、マジで意味分かんねぇんだけど」

 うろたえる蓮とは打って変わって、雪乃は冷静そのものだった。

「結論から言うと、どうもなってない。水無瀬さんも死んでない。いまは分かんないけど、少なくともこのタイミングでは」

「は……?」

 眉を寄せる。開いた口が塞がらない。

 現実を直視すれば、間違いなくこの動画内では、小春は死んでいる。
 身体を分断されて生きていられるわけがない。

 雪乃はいったい何を言っているのだろう。
 というか、そもそもこの動画は何なのだろう。
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