ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜

「そやな、そこから説明せんと。……うーん、まずはあたしの魔法からやな」

 アリスは一人で結論を出し、皆の反応を待たずして口を開く。

「あたしは“巨大化・矮小(わいしょう)化魔法”を使える魔術師や。あ、二つの魔法を持っとるわけやなくて、巨大化と矮小化でワンセットやで」

 人差し指を立て“一”を示しながら言うと、さらに続ける。

「対象は自分自身だけやけど、でっかくなったりちっちゃくなったり出来るってわけや。最小で十センチ、最大で十メートルまでな」

「……なるほど、そのあだ名にぴったりの能力ね」

「ま、偶然やけどな!」

 琴音の言葉にアリスはそう言って笑った。

 彼女の魔法の全容を聞けば、奏汰の家の前で消えたからくりが理解出来た。

 消えたのではなく、矮小化して立ち去ったのだ。

「こういう能力だからさ、情報収集が得意なんよ。魔術師の中の情報屋なんだ。それで、あんたらのことも知ってたってわけや」

 そうなると、これまでの会話もすべて筒抜けだったのかもしれない。

 アリスに悪意がないのが幸いだった。

「……ってことで、あたしもあんたらの仲間になってもええか?」

 笑顔を咲かせ、アリスは告げる。

 表情は明るいが、近くで見るとくまが出来ているのが分かる。

 彼女なりの苦労があるのかもしれない。小春は微笑んで頷いた。

「もちろんだよ。よろしくね」

「ありがとう、小春」

 アリスは小春の手を取り、感激したように一層瞳を閃かせた。

「ちょっと待て。信用出来るのか?」

「そうよ、散々盗み聞きしてたんでしょ」

 慧と琴音はすかさず小春の判断に異を唱える。

 確かにアリスはいち早く素性を明かし、自身の能力についても惜しみない情報開示をした。

 しかし、だからと言って何の憂慮もなく手を取り合えるかと言えば、答えは“NO”だろう。

「それに関してはごめんな。でも、そうやって得た情報はあんたらにも提供すんで」

「だったら、まず聞かせて。この学校に、私たち以外にも魔術師はいる?」

 アリスは眼光を鋭くし、唇の端を持ち上げる。

「おるで。あんたらとあたし、胡桃沢瑠奈を除いても、少なくともあと三人」

 アリスは瑠奈のことも知っていた。言葉の信憑性が上がる。

「悪いけど、誰かまでは言われへん。あたしが狙われるのも嫌やし、あたしからの情報漏洩で死人が出ても後味悪いし。まぁ、同学年ということだけは教えたる」

「な……、そこが肝心なんでしょ。それくらいの情報なら、何とだって言えるじゃない」

 アリスの主張も琴音の言い分も理解出来た。

 小春は俯く。

 まだ、他に三人もいるとは。……いったい、誰なのだろう。どんな魔法を持っているのだろう。

「ま、いいんじゃねぇか? 情報屋が味方なら心強いし。な?」

 蓮は小春を窺った。

 いつも、どんなときでも、小春の意思を尊重してくれる。

 小春は頷き、眉を下げる。

「うん、アリスちゃんの安全も心配だし……」

 アリス自身が口にしたように、色々な情報を持っている彼女を疎ましく思う魔術師が、その命を狙うかもしれない。

 そんなとき、自分たちがいれば、守ることが出来る。

「ありがとう、二人とも。優しいな」

 屈託のないアリスの笑顔に、琴音はため息をついた。

 慧も無言でメガネを押し上げる。折れるしかなさそうだ。

 能力の性能からしても、いざというときは何とかなるだろう。

「……分かったわ、そこまで言うなら」

 ────かくして、情報屋のアリスも行動をともにすることとなった。
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