実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

 王都の噂と、流行の新聞。
 今日も最近私の屋敷の周囲には、記者たちが集まってしまっている。

「おや、お客様がいらしたようですね」

 カーテンをそっと持ち上げて見ていると、記者たちがすごい勢いで正門に走って行くのが見えた。
 それだけで、来客が誰なのか分かってしまう。

「レザール様……。目立つのは好きじゃないって言っていたのに」

 どちらかと言えば大人しく、目立つことを好まない少年だったレザール様。
 もちろん、魔術師団長になった今、もうそんなことは言わないだろう。
 でも、人間の本質というものは、そんなに簡単に変わらないと思う。

 それなのに出迎えたところ、なぜかレザール様は全力疾走してきた上に、私を抱き上げた。
 カメラのシャッター音が周囲に鳴り響く。

「会いたかったです」
「あの、写真撮られていますよ? 目立ちますよ?」
「いいんですよ。あなたと俺の仲に邪魔が入らないように、ちゃんと広めてもらわないと」
「……!?」

 そう言って笑ったレザール様。
 人間の本質は、そう簡単に変わらないはずだ。
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