実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

「――――あの、目立つのは好きではないと言っておられましたよね?」
「よく覚えてますね。……今も好きではありませんよ」
「では、なぜ逆に目立つような行動を」

 明日の一面は、きっと私たちの関係に関することに違いない。
 レザール様は、コーヒーを一口飲んで微笑んだ。

「……そうですね。もし、フィアーナが目立たずに部屋の中で俺の帰りだけ待っていてくれるような人なら、こんなことしなくてもよいのでしょうが」
「え。私のせい……」
「そうですよ。魔術師団長に上り詰めてしまったのも、公務をおろそかにしないのも、それほど好きではない社交に最近積極的に取り組んでいるのも……」

 微笑んだレザール様は、本当に可愛らしい。
 その微笑みは、永遠に心のアルバムにとどめたいレベル。
 けれど、立ち上がったレザール様と私の距離はあまりに近くて、もうそれどころではない。

「あ、あの……!?」
「そう、全部あなたのせいです。責任取ってくださいね?」
「あうあう……」

 赤い髪の毛が一房手の平にのせられ、そこに口づけが落ちるのを熱に浮かされたように見つめる。
 髪の毛には感覚なんてないはずなのに、くすぐったくて仕方がない。
 しかし、今日も私には、逃げ場がない。

 ***

 翌日の新聞には、なぜか私たちの婚約と結婚は秒読みだと書かれていた。
 すでに、式場も予約してあるらしい。……本人知らないのですが?

(え? その情報の出所はどこですか。もちろん、でっち上げですよね?)

 混乱しながらも、私を抱き上げて余裕の表情で微笑むレザール様の写真を切り抜いて、今日も大切にレザールきゅん専用スクラップブックに保存したのだった。
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