実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
***
「確かに、会いましたわ……。婚約する前に。でも、夢の話なんてすっかり忘れていました」
「そう……? 今でも俺はよく覚えている」
私を見つめるレザール様の瞳は、揺らぐことがない。
美しい水色の瞳。大好きな色……。
「北の地を、魔獣のいない場所にした」
「……まさか、実現してしまうなんて」
「時間がかかってしまったけれど、褒めて欲しいな?」
「え!?」
悪役令嬢フィアーナの結末は、いくつかある。
そのどれもが、悲しい結末……。五十年上の辺境伯との思いがけない幸せな日々があったけれど……。
(北の地で魔獣に襲われ命を落とす。生涯塔に幽閉される。神殿に行く途中に何者に襲われて謎の死を遂げる……ひどい結末ですわ)
「……それでも、レザール様に危険な目に遭って欲しかったわけでは、ないのです」
私は、褒め言葉を見つけることが出来ずに、そのままレザール様に抱きついた。
リーフ辺境伯のそばで、幸せにのほほんと暮らしていた間、レザール様は北の地で戦っていた。
「ごめんなさい……。夢の話なんて、しなければよかった」
「――――あなたのことを知ることが出来てよかった」
「ご無事でよかった」
「……あの日、あなたを攫って逃げる選択肢を選ぼうと何度思ったか……。でも、それを思いとどまらせてくれたのは、リーフ前辺境伯でした」
「旦那さまが?」
そういえば、レザール様とリーフ前辺境伯は、手紙のやりとりをしていたという。
私の知らないうちに……。
「あなたが幸せに生きられるように、しばらく安全を確保してくれると、約束してくださったので」
「……そうですか」