二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「ねえ涼!私の何が悪かったの!?」
「涼くん!私のこと、愛してるって言ってくれたじゃない!」

 あの日の夜も、涼の家に女が二人も押しかけてきた。
 それぞれの女同士の面識はなかったはずなのに。
 だが、涼はそんなことすら気にはならなかった。
 何故なら彼女達が誰か、覚えていなかったから。
 興味がないことはすっかりと忘れてしまう。
 それも、涼という人間の本質。
 涼はこの時

(また、うるさい蝿がきたな……)

 くらいにしか、思っていなかった。

(面倒にならないうちに)

「悪いけど、仕事で戻らないといけなくなった」

 と、適当な理由とちょっとした「飴」を与えてやれば、女たちはすぐに去っていく。
 涼は、それすらもお手のものだった。
 だけど、やはり頭を使う。
 それが、少々しんどいと涼は思った。

(またどこかマンションを買い替えるのがいいのだろうか……)
 
 涼にとって、この風呂なしアパート生活は正直言えばパズルみたいで面白いと思っていた。
 だから、面倒な依頼人を完膚なきまでに叩きのめした後も続けようとは思っていた。
 時々鳴る変な音も、隣から聞こえてくる男の奇妙な声も、全部が涼のスリルを求める気持ちを一時的に満たしてくれていたから。

(とりあえず、風呂に入るついでにたっくんをいじめに行くか……)

 涼にとって、可愛い弟の拓人はこういう時にうってつけのストレス発散相手だった。
 涼は特に好んでいた。
 涼が拓人の前に現れた時に見せる、拓人の心底嫌そうな顔が。
 そんな、いつものことをしようとしたのがあの日。
 けれど、その日唯一違っていたのが、香澄というイレギュラー。
 涼は、あの家の合鍵を持っている。
 だから、拓人がどんなに忙しくしていたとしても、あっさりと家に入ることはできる。
 なので、部屋に入ってすぐ、拓人が熱心に誰かと話しているのを聞いてしまい、さらにはそこから拓人が嫌がりそうな悪戯まで思いついてしまったのだ。
 拓人のフリをして、相手と会話をする。
 いつ拓人だとバレるか、そんな簡単なスリルも味わえそうだと思ったから。
 そんな自分の思いつきに、涼は心から感謝をしている。
 それがなければ、香澄の存在を知ることはなかったのだから……。
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