二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
 まず最初に、涼は拓人の元カレに電話で連絡をした。拓人のフリをして。
 
(たっくんへの未練残しまくりなのは知ってたしね)

 自分の声を少し高めに出せば、拓人の声に近くなることも涼はわかっていたから、それは容易かった。
 さらに、この時間はまだ、元カレが仕事のせいで電話に出られないことも分かっていた。
 自分の声がタクトに聞こえないように、1度玄関の外にでてから、すでにつかんでいた拓人の元カレの留守電に

「電話でどうしても話したいことがあるの、折り返しして」

 と吹き込んでおいた。
 こうしておけば、すぐさま反応はあるだろうと、涼は睨んでいたから。
 
(15分後くらいには動きがあるかな?)

 涼はどうやって15分という時間を潰そうかと、リビングに向かおうとした時だった。

(まさか、もう……?)

 拓人が焦った様子で玄関外に出て行くのが見えた。

(予想より随分早いけれど……)

 涼は、その間にこっそりと拓人の書斎へと忍び込んだ。

(あ、拓人が通話切ってたら意味がないか)

 その可能性があることを、書斎に入る前一瞬だけ考えたが、そんな心配はすぐに消えた。

(ふーん……なるほどね)

 拓人はダブルモニターで仕事をしている。
 右側のモニターには、ワードソフトの画面が出ており、中央の画面に映っていたのは……。

(へえ。この子と話してたのか)

 これが、涼が初めて香澄の顔を見た瞬間だった。

(たぬきとチワワを足したような顔立ちだな……今まで僕の周りにはいなかったタイプだ。少しは、楽しませてくれそう……かな?)

 この1時間後には、すっかり自分が骨抜きにされるとも知らない涼は、どう第一声を放つかを考えながら、拓人の席に座った。
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