二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「お待たせ」

 涼は、まずは無難が1番だろうと鉄板のセリフを言ってみた。
 すると、たぬきとチワワのような子と涼に認識された香澄
はキョトンと目をまあるくさせて、涼を見つめてきた。
 正確に言えば、涼ではなくモニターをじっと香澄は見ていたわけだが、涼はそんな香澄の目を見て

(随分、可愛い目をして僕を見つめてくるね……)

 という、自分にとって都合の良い勘違いをしていた。
 涼の、香澄への惹かれポイントの最初こそが、瑞々しくも潤んだ、ビー玉のような目だった。
 これも実際には、直前に香澄が疲れ目に効く目薬をさしたからこその産物ではあるが、これも涼には関係なかった。

「あの……先輩……」

(先輩?あいつ、自分のことを先輩って呼ばせてるの?本当に笑わせてくれるね)

 自分が知っている拓人とあまりにもかけ離れた呼び名に、思わず吹き出しそうになったが、涼は頑張って耐えた。
 ここでバレては面白くないから。

「それじゃあ、早速続きしようか」
「は、はい……」

 そういえば、とここで気づいた。

(この子の名前は、何て言うんだろう)

 きっと拓人は、この子の名前をちゃんと言っているだろう。
 ずっと涼が言わないのも違和感がある。
 それに涼は、ちょっと試してみたいと思った。
 自分が、目の前の女の子の名前を呼んだら、どんな声で返事をしてくれるのか……と。
 
(他の女達のように、うざったくないといいんだけどな)

「ねえ」

 涼は、壁越しで聞いていた課題と、机に置かれている拓人のメモから、およその会話の流れはわかっていた。
 ここから、次話すべき内容を推測する。
 そんなことは涼にとっては朝飯前だ。

「シチュエーションを考える上で、名前を呼ばれるのって結構重要だと思わない?」

 少なくとも、女たちから涼はそう言われ続けてきた。
 高級ホテルのラウンジで、初めて呼び捨てにされてからキスされたいとか。
 ベッドを共にする時だけ呼び捨てにされたいとか。
 そういう願望を女たちが持っていることを、涼は嫌と言うほど身にしみてわかっていた。

(さあ、君はどんな回答をするのかな?つまらない回答はやめてくれよ)

 涼は、ソワソワしながら答えを待った。
 でも、次に返ってきた言葉は、涼にとっての予想外だった。

「話すキャラクターによりますよね」
「え?」
「先輩、いつもおっしゃっていたではないですか。話すキャラクターと、受けるキャラクターによって、萌えポイントが変わるって。この場合、どんなキャラクターを想像すればいいですか?」
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