二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「か、観察……?カップルの?」

 涼は、香澄の発言の真意がわからず、そのままおうむ返しで聞いてしまった。
 香澄は、至極当然と言いたげの表情だった。

「三次元のカップルを眺めていれば、少しは恋愛の疑似体験ができるんじゃないかと思いまして」

 涼は、この疑似体験、という香澄の言葉が引っかかった。
 
(この子は、恋愛をしたいとは思わないのだろうか?)

 きちんと香澄と話をしたのはたった1度だけ。
 その時にも感じたことだが、香澄は自分が恋愛の主役になるという考えは微塵も持っていなかった。
 だからこその、疑似恋愛という単語なのだろうと、涼はすぐさま推測した。

(僕と、恋愛したいと思ってくれないだろうか)

 シチュエーションは整えた。
 あとは、自分の行動のみ。
 そう考えた涼は、香澄の唇を親指でなぞりながらこう囁いてみた。

「僕が教えてあげましょうか?」
「……はい?」

 涼は、苦笑いを堪えるのに必死だった。
 香澄は、涼の言葉に警戒をしているようだった。
 この反応自体は、涼の予想通りだった。

(こういうタイプの子はどういう言葉がいいのだろう)

 涼はいくつか試してみた。

「どうでしょう?」

 同意を求めてみたり。

「あなたは、恋愛体験が欲しいのでは?」

 彼女自身の発言をおうむ返ししてみたり。
 どれもこれも、香澄の表情は変えさせられたが、行動には至らなかった。
 涼は、香澄の弱い部分に1つだけ心当たりがあった。
 これは、きっと正解だと思った。
 何故なら、その弱い部分こそが、涼が香澄に惹かれた理由でもあるのだから。

「僕では、お役に立てませんかね?」
「えっ!?」

(どうやら、当たったみたいだ)

 香澄は大きく狼狽えた。
 それは、香澄自身が他人を助けたいと考えている奉仕の心を持っているから。
 涼は、その香澄の心に賭けたのだ。
 その結果、涼は次の香澄の言葉を引き出すことに成功した。

「どうして、私に優しくしてくれるんですか?」

 涼は、早く答えたくて仕方がなかった。
 君が可愛くて仕方がないからだよ、と。
 でも、それが逆効果になることも今日改めて気づいた。
 香澄は、誰よりも警戒心が強い小動物のような子だから。

(仕方がない……)
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