二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「な……何言ってるんですか先輩!」
「見たところ、部屋はあるみたいよ」

 香澄の家は、1階と2階、併せて3LDKはあることは、涼も香澄を運ぶために2階に立ち入った時に分かった。

「でも、掃除とか全然してませんし」
「あら、私が今のあなたに家事をさせる気だと思ってるの?心外だわ?」
「え……?」

 拓人は、ふんわりと優しい笑みを香澄だけに向ける。

「こんな、どうしようもない経緯でお互いの顔がバレちゃったわけだけど、これも縁だと思うの」
「縁、ですか?」
「そう。どうせ私たち、これからもたくさんの作品を一緒に作り上げていくじゃない。あなたにも、私、もっとたくさんの仕事をしてもらいたいし」
「本当ですか!?」

 香澄の表情が、一気に華やいだことに、涼はムッとした。

(その表情を、自分にむけてくれたらどんなに良いか……)

 涼がそんなことを思っていることなど、香澄は想像もしていないのだろう。

「……実は……このまま先輩と連絡を取れなくてどうしようって思ったことはあったんです」
「そうでしょう?」
「はい。今日連絡し忘れたら、もうお仕事回してあげないって言われるんじゃないかって、もう心配で心配で……」
「…………香澄、ちゃん?」
「はい」
「心配なのは、そこなの?体調、ずっと悪かったって言ってたわよね」
「はい。だからお仕事を締切通りこなしたり、お仕事の打診に漏れがないか確認するのはとても大変だったんです」
「…………うん、分かってたわ。あなたは、そういう子だって」
「そういう子?」

 拓人の言葉に、香澄はいまいちピンときていないようだった。
 拓人は、魂でも抜けるんじゃないかという程の大きなため息をついてから、香澄にこう言った。

「分かった、あなたにはこういう言い回しの方が効くのよね」
「効く?」
「あなたがちゃんとまともに仕事ができてるか、私が逐一監視するわ!でなければ、仕事あげないから!」
「ああ、それやですーどうぞ部屋はありますから……!」

 たったそれだけの言い回し。
 だけど、それこそが、香澄の心を動かすものなのだろう。
 あっさりと、香澄は拓人をこの家に住まわせることを了承した。

「あ、でも掃除は……」
「そこは、心配しないで」
「え?」

 そう言うと、拓人は涼を指差した。

「そこに、いるでしょ。まあ、本当にまともに使えるかは分かんないけどね」
< 145 / 204 >

この作品をシェア

pagetop