二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
(なるほどね……考えてくれるじゃないか……この僕を、雑用としてこき使おうなんて……)

 涼には、拓人なんかの魂胆は透けて見えていた。いつもであれば笑顔で無視していたであろう。
 だが、今の涼は違う。
 胸元には、可愛い可愛い香澄が、自分を見上げている。
 そして、それを受け入れさえしてくれれば、香澄と一つ屋根の下で毎日を過ごすことができる。
 そんなメリットを取る方が、よっぽど涼にとっては重要事項だった。

「僕を、誰だと思っているのかな」

 涼の言葉に、拓人の眉がぴくりと動いた。

「僕は、誰かさんと違って、どんなことでも完璧にこなせるけど」
「あら。そこまで言うなら、本当にやってもらおうじゃない。ね、香澄」
「へっ!?」

 涼の胸元で、香澄の体がびくっと反応した。

「へっ、じゃないわよ。そこの顔だけは綺麗なクズを、香澄の雑用係としてじゃんじゃんこき使って良いってことなのよ」
「ざ、雑用係……ですか……?」

 香澄は、涼の顔をじっと見つめてきた。
 嬉しさのあまり、ニコッと涼が微笑み返すと、何故かすぐに目を逸らしてしまった。

「あの……それって……時々……手伝うとか……そのレベル感の話……ですよね?」
「何言ってるのよ。24時間、あんたがして欲しいことを何でもやる奴隷としてこき使って良いってことよ」
「ど、奴隷……ですか!?」
「そうよ。それとも、やっぱりこんな顔だけのクズはお呼びでないってことよね」

 香澄は、今度は恐る恐る涼の顔を見た。

(なんか、今度は怯えてる……?)

 涼は、なぜ香澄がそんな顔をして自分を見るのか、心当たりがなかった。

(僕、そんなに怖い顔をしてしまったのだろうか?)

 自分の笑顔がどんな印象を与えるのか、客観的に見たことがなかった涼ではあったが、今度は慎重に微笑んでみた。
 香澄を安心させるようにと。
 すると香澄は、ぱっと涼から視線を逸らし、拓人の方を見ながらこう言い放った。

「ダメです!無理です!」
「っ!?」

 涼は、この時1番ショックを受けた。
 雷に打たれた方がまだマシだとすら思ったほど。

「あら。やっぱりこんなクズと一緒にいるのが耐えられないってこと?」

 拓人は、してやったりの顔をしながら香澄に尋ねる。

(もし、そんなこと言われたら僕はどうしよう……)

 涼は、香澄の次の言葉を聞くのが怖かった。
 けれど、香澄から飛び出てきたのは、これも予想外の言葉……。

「ダメです!こんな綺麗な人を私なんかの奴隷になんかしたら、バチが当たります!それに……」

 香澄は、両手で顔を隠しながらさらに続けた。

「こんな綺麗な人に、こんなつまらない顔見続けられる日々……心臓がどうにかなりそうです……」

(僕の方が、どうにかなりそうだよ……)

 涼は、今すぐ香澄を抱きしめたい欲を必死でこらえながらも、どこから香澄の発言を訂正しようか本気で考え始めた。
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