二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「なっ……」

 んで、と言葉を繋げようにも、涼は次の言葉に迷っていた。
 と言うのも、今さっき受けた香澄からの「涼先生だけはお断りしたい」攻撃のダメージが酷すぎた。
 次それ以上の言葉を投げかけられたら、涼は自分の精神がどうになかってしまうのではないかと、本気で考えてしまったからだった。

(一体どうして、拓人なら良くて僕はダメなんだ……)

 せめて、その答えだけでも聞きたい。
 でももしその回答が

「先輩の方が好き!」

 だとしたら、考えるだけでもゾッとする。
 そもそも、確かに香澄は涼とのセックスの時は、涼の愛撫にも、涼のアレについても「好き」と何度も繰り返してくれた。
 だが、それはあくまでベッドの上での話。
 今更ながらに涼は気付かされた。
 拓人の方が圧倒的に多いのだ。香澄と過ごしてきた時間が。
 それも見たところ、香澄は拓人をものすごく慕っている。

(男として慕っているように見えないのが、救いか……)

 どちらかといえば、教祖を崇めるかのような視線であることは、涼には分かっていた。
 1度そういう案件を弁護士として受けたことがあったから。
 とはいえ、男女関わらず、自分以外の誰かに、香澄が熱い視線を向けること自体、涼には我慢ならないことでもあったのだが。

「香澄ちゃ〜ん、こっちいらっしゃい」

 拓人が、高い声で香澄を呼んだ。

「は、はい……」

 拓人の言葉に素直に従った香澄は、涼の体からさっと抜け出し拓人の元に行ってしまった。

(くそっ……拓人……)

 明らかに「私の方が上よ、どや」と言いたげな表情を拓人が涼に向けてくるものだから、涼のムカムカが頂点に達しそうになっていた。
 拓人が、香澄の耳元に口を寄せているのも涼は気に食わない。
 それに、自分に聞こえないように何かを話しているのも。
 でも1番気に食わないのは、この後に及んで何をすれば香澄に拒否されないか、全く思い付かない涼自身の経験不足だったりもする。

「はい……えっ!?」
「ね、いいアイディアでしょ。あなたの中に新たな萌え要素が生まれるの」
「確かに、そうかもしれませんがでも……」

(萌え要素?)

 全く触れたこともないような言葉で、意思疎通している2人。
 ここまでくると、憎いより羨ましいという感情すら抱き始めた。

(後で辞書で調べておくか)

 事態が急展開したのは、それからほんの1分後。
 香澄が、涼の同居も容認したのだ。

「お二人が和室使えるように、片付けてきますね」
「そう言うのも全てこの男にやらせればいいのに」
「さすがにそうはいきませんから……!」


 そう言うと、香澄は早足で2階に行ってしまった。

(一体、何が香澄の意見を変えたんだ……?)

 拓人は「私に跪きなさい」と言いたげな表情で涼を見ていた。
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