二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「……なんですって?」

 最初に口を開いたのは、香澄の母親だった。

「本当の死因も何も、お医者様から死亡診断書はもらっているのよ?あなたたちも確認したわよね、ね?」

 香澄の母親は、女狐さんと子狸さんをギョロリと睨みつけながら確認する。2人はこくこくと小さく頷いた。

「私も……ミステリーが好きでして、最初は……もしかしてと……思ったんですけど……でも……まさか……ねえ……」
「そ、そそそそうですよ…………」
「ほらごらんなさい!本当の死因なんて変な嘘……偽証罪で訴えられても仕方がないですわよね……ねえ……芹沢先生……」

 香澄の母親の言葉を聞いた涼は、ふふっと微笑した。
 あまりにも綺麗な音だったので、思わず涼を見上げてみると、下から見ているのに髭1つない綺麗すぎる顔が、楽しげな笑みを浮かべていた。

(が、顔面凶器……)

 その眩しさに、ぱっと香澄は目を逸らしたが

「もっと見てくれていいんだよ」

 と涼にさりげなく言われてしまい、別の意味でいたたまれなくなった。
 とはいえ、話の雲行きは非常に怪しいことも、香澄は感じ取っていた。

(お母さんの再婚相手の、本当の死因ってどういうこと……?)

「先に言っておきますが、僕は別に警察でも探偵でもない。ただの弁護士です」
「では、その……ただの弁護士さんがどうしてこんな、探偵まがいなことを?」

 香澄の母親が、馬鹿にしたような言い回しで涼に迫った。

「場合によっては、名誉毀損で訴えますけど?」
「それには及びません。僕は、別にこれからお伝えする事実を世間に公表する気は、一切ありませんから。ただ……」

 涼は香澄の肩にそっと手を置きながら、こう言葉を続けた。

「僕の、愛しいフィアンセに教えてあげたかったんです」
「「ふぃ、フィアンセ!?」」

 香澄と、香澄の母親は同時に声をあげた。

「あなた……この間も家族がどうとか言ってたけど……」

 香澄の母親が、いきなり立ち上がり、香澄に近づいた。

「あんたみたいなドブスが、芹沢先生のフィアンセだなんて……どうせ体でも使ったんでしょ!?この、アバズレが!!」
「ごめんなさい!!!」

 香澄の母親は、香澄の髪の毛に手を伸ばそうとし、香澄もまた、反射的に体をかがめて自分を守ろうとした。
 でも、香澄の母親の暴力は、香澄には届かなかった。

「やめてもらえますか?これ以上、僕の愛する人を傷つけるのは」

 涼が、香澄の母親の手首を掴んだ。
 そして、ぱっと突き放すようにその手首を離すと、香澄の母親はコントのようによろけて、尻餅をついた。
 どすんっという地響きが、テーブル越しに伝わってきた。
 これがコントだったら、誰もが笑っただろうシチュエーションだが、香澄も、女狐さんも、そして子狸さんも笑えなかった。
 唯一

「無様ですね……ふふふ」

 涼だけが、香澄の母親を見下すように笑った。
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