二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
 香澄の封印されていた記憶が、少しずつ蘇り始めていた。
 父が死んだのは小3。
 確かに突然死ではあったが、原因不明の病気などではなかった。
 香澄は、最後に家族3人で出かけた水族館で、1冊の絵本を買ってもらった。
 滅多におねだりすることがなかった香澄が、しつこくねだり、しぶしぶ買ってもらったその本は、大好きなラッコの可愛さを絵とストーリーで存分に楽しめるものだった。
 ただ、大きめの絵本だった為、香澄が普段使っている子供用の本棚では入らなかった。
 そのため父親が

「新しい本棚を作るまで、一時的にお父さんが預かっていよう」

 と、香澄の絵本を自分の本棚に置いてくれたのだ。
 それが起きたのは、水族館へのお出かけから1ヶ月ほど経った土曜日の昼。
 父親は部屋の真ん中で昼寝をしていた。
 香澄は、こっそりと父親の部屋に入り、あの絵本を眺めようとした。
 でも、思ったよりも高い位置に入れられていたため、香澄は近くにあった父親の椅子踏み台がわりに使った。
 そうすることで、絵本はするりと香澄の手に渡ったが、急にぐらりと本棚が倒れ始めた。

「香澄!?」

 異変に気づいた父親がすぐさま起き上がり、香澄を庇った。
 その結果、香澄はほぼ無傷で済んだが、父親が本棚の下敷きになってしまった。
 香澄は、ショックで気を失っており、さらにこの時、母親は外出していた。
 結果、父親はそのまま死んでしまった。
 これが、香澄が忘れていた真実。
 だからだろうか。
 父親が死に、母親が出て行ってから親代わりにやってきた祖母からは、毎日のように言われ続けた。

「香澄ちゃんはね、死神さんなんだよ。だからお父さんが死んでしまったんだよ」
「香澄ちゃんがいなければ、あの女がお父さんと結婚することはなかったからね」
「香澄ちゃんは、みんなを不幸にするんだよ。だから、お外に出てはダメだよ。おばあちゃんだけは最後まで香澄ちゃんを愛してあげるから、これ以上の迷惑をかけてはいけないよ。もし香澄ちゃんが地獄にいってしまったら、天国で3人で暮らすことができなくなってしまうからね」

 それに対して、香澄は何の疑問も持たずにこう答え続けた。

「分かりました」
「外には出ません」
「もう誰にも迷惑をかけません」

 そう言うと、祖母が

「いい子ね。おばあちゃんだけは、死神の香澄ちゃんを愛してあげるからね」

 抱きしめてくれたから。
 だからこそ、香澄は今改めて思ってしまった。
 
(私は子供を産んじゃだめだ。死神なんだから。これ以上悪いことをしたら、お父さんとおばあちゃんがいるところにいけなくなっちゃう)
 
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