二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
 今朝、香澄の目を覚まさせたのは、焼きたてのパンと卵の匂いだった。

「ん……?」

 目を開いてすぐの香澄の目に入ったものは2つ。
 マンガや映画のシチュエーションではよく見たことがある、部屋に用意されたホテルの朝食。それもバラの花が飾られている。
 それから……。

「起きたかい?」

 明らかに海外ブランドの良いものだと分かる上質なスーツに身を包んだ、香澄の世界には決して存在しないような綺麗な男性がベッドの淵に座り、香澄の髪の毛を撫でながらコーヒーを嗜んでいた。
 香澄は、あまりにも現実味のない光景に驚き、一気に体を起こした。
 途端に、香澄の頭の中に鈍い痛みが広がった。

「うっ……」
「大丈夫?」

 そう言いながら、男性はペットボトルを香澄に手渡した。
 あまりの痛みに、目を開けてすらいられなかった香澄は、中身が何かを確認しないまま、ペットボトルに口をつけた。
 香澄が飲み慣れたスポーツドリンクの味がした。
 香澄がそれを飲み干している間、男性は香澄の頭を撫でながら

「体調はどう?」

 と優しく聞いてきた。
 
「あ、頭が……痛いです……」

 香澄は、ペットボトルを握りしめながら答えた。

「ちょっと待ってて」

 男性は香澄からさっと離れると、近くのソファに置かれていたビジネスバッグから何かを取り出してから戻ってきた。

「僕がいつも飲んでる市販の頭痛薬。これで良いかな?」
「あ、ありがとうございます……」

 香澄は、自分に親切にしてくれる男性の正体にまだ心当たりがないものの、それよりも自分の頭を支配する痛みをどうにかしたい一心で、男性から薬を受け取り、ペットボトルで飲み干そうとした。

「それで飲んではダメだよ、香澄」

(何でこの人、私の名前を知っているんだろう……?)

 そんなことを考えてる香澄の手から、男性はペッドボトルを急いで抜き取り、その代わりになみなみと透き通った水が入った綺麗なグラスを渡した。
 香澄は、頷く間もなく口に薬を放り込み、水で流し込んだ。
 食道を水が通り抜ける心地よさが、少しずつ香澄の思考力を取り戻させた。

(あれ、私はどうして頭が痛いんだろう……?)

 グラスが空になって一息ついたところで、香澄はようやく自分の状況を振り返る余裕が生まれた。
 そこまできて、香澄はようやく気づいた。

「こっち見て」

 優しく香澄の頬に触れ、自らの顔の方に向けさせてから

「水、ついてるよ」

 と、指で香澄の口から滴る滴を拭った男性と自分が、つい数時間前まで何をしていたのか、を。

(そうだ……私……!この人と……!!!)

 そこまで思い出してからようやく、香澄は自分が生まれたままの姿で起き上がっていたことと、下腹部に残る違和感にも気づいてしまった。
< 46 / 204 >

この作品をシェア

pagetop