二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
(ど、どどどどどうしよう……私、なんてことを……)

 香澄は、もぞもぞと布団に潜り込み、ズキズキと痛む頭を抑えながら必死に思い出す。
 まず、この人の名前は確か……。
 布団からチラリと顔を出しながら、香澄は浮かんだ名前を口にしてみた。
 間違ってても良いように、小さな声で、だったが。

「リョウ……さん?」
「ん?」

 正解だったらしい、と香澄はまずほっとした。
 ベッドの上で散々呼ばされた名前ではあったのに、香澄の脳全体に響く激痛が、思考力を低下させていることもあり、その名前が正しいかどうかすら香澄は確証を持つことができなかったから。
 とはいえ、安心したのも束の間。
 自分が次、一体何をすればいいのか、香澄はまるで検討もついていなかった。
 自分がリョウに何をさせたかは、徐々にビジョンとして蘇ってくる。
 その理由が、香澄の

「恋愛を教えて欲しい」

 というふざけた理由だということも、この時はもう思い出すことができていた。
 謝るべきなのか。
 感謝するべきなのか。
 それとも……また別のことが必要なのか。
 香澄は、次のすべき行動の検討がつかず、目を白黒させながら必死で脳みそをフル回転させていた。
 過去読んだ漫画や、遊んだゲームに何かヒントがないだろうかと期待をこめながら。
 そんな時だった。

「ねえ、香澄。口を開けてごらん」
「え?」

 反射的に言われた通りに口を開けると、甘くてふわふわした何かが舌の上に広がった。

(何これ……!美味しい……!)

「このホテルのオムレツは絶品なんだ」
「そ、そそそそうですか……」

 半熟のトロトロのオムレツは、飲み物かと思うほどあっさり飲み込めてしまった。

「ほら、起き上がって。まだたくさんあるよ」

 リョウは香澄の手をとりながら、同時に新品のバスローブを香澄に羽織らせた。

「こっちも食べてごらん」

 今度は、サクサクのクロワッサンを自分の手でちぎって、リョウは香澄の唇にあててくる。
 甘いバターの香りが、香澄の食欲を刺激し、香澄の唇は自然と開いてしまう。

「本当に、君はいい子だね」

 ただ、美味しいクロワッサンを与えられ、それを咀嚼して飲み込んでいるだけなのに。
 まるで子供の100点のテストに喜ぶ母親のように、誉めてくるリョウに気恥ずかしくなってくる。

(私は、どうして餌付けされてるんだろ?)

 そんな疑問をようやく抱ける余裕ができた頃には、すでにほとんどの皿が空になっており、食後用に香澄のために用意された、ミルクたっぷりにカフェオレが香澄には手渡されていた。

「体は、大丈夫?」
「え?」
「ここ、辛くない?」

 リョウはそう言いながら、バスローブに隠された香澄の下腹部をそっと撫でてきた。
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