二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
香澄は、その日のことを思い出してみた。
まず、合宿の1日目。
スタートは朝10時から。
最初は、八島が普段使ってる参考文献を教えてもらったり、その本の中の1冊について座学という形で講義をしてもらった。
それから、12時になりお昼ご飯。
いつもダイニングテーブルにノートパソコンごと移動して、いつもの準備をして食べ始めた。
本音を言えば、香澄は食事の時間だけは、極力八島とは繋ぎたくなかったが
「その時間でしかできないトレーニングもあるわ。それに、1度くらいは私とランチして頂戴よ」
と、言われてしまったので、そういうのは早い方がいいだろうと考え、最初のランチタイムをその時間にした。
ランチ1つから、色々な物語ができる。
まず今食べているものについて、簡単なショートストーリーを作れと言われてしまい、流石に困った。
私が作っているものは、毎日同じものばかり。
私の日常そのもの。
それを、魅力的なストーリーにするなんて、どう逆立ちしても無理だと香澄は思った。
でも、八島は
「そんなありきたりな日常を、美しい絵画にするのが画家よ。フェルメール、後でググっておきなさい」
アドバイスついでにさらっと課題を追加してくるので
(あ、この人鬼だな)
と香澄はこっそり思った。
午後になってからは、有名な恋愛映画を2本ぶっ続けで見てから、1本スリラーサスペンスを見た。
どちらも、感情を大きく揺さぶってくるもの。
どんなシーンで、自分の感情が揺れ動いたかをきちんと記録しろと言われた。
あるキスシーンについて
「ベロチューって苦しそう。三次元であれするの大変そう」
という感想を書いてみたら
「情緒なさすぎ、やりすぎ」
バッサリ切られた。
そんなやりとりが繰り返されてから、次は夕食。
これはいつも通り、いつものように食べるだけ。
だけど、ランチに教わったこと実践するようにと言われたので、やっぱりいつも以上に味がしない夕食になった。
画面共有は、この次。
涼が言った通りの課題が出された。
ネットや本、ありとあらゆる媒体を使って、ロマンチックなデートができる場所を書き出せ。
100でも200でも。何だったら1000以上でもいい。
場所の数だけ、出会いもロマンスもある。
人の数だけシチュエーションが存在する。
それを量こなして体に染み込ませろ。
それが八島が香澄に課した、課題の目的だった。
画面共有をさせていた理由としては、スプレッドシートの入力や調査の仕方をリアルタイムで見ながら、都度的確にチェックを入れるため。
逆に言えば、八島がそうまでしないといけないくらい、香澄にはその部分の土台が圧倒的に足りないということ。
「うん、その場所なら盛り上がりそうね」
などと選び方を褒めてくれるかと思えば
「香澄、公園のベンチだけ書くんじゃなくて、そこから何が見えるのか、聞こえるのかまでちゃんと意識しなさい。高校生がたむろってる中でロマンチックなキスができると思うの?」
想像力の欠如をバッサリと指摘される。
そんな飴と鞭の使い分けも、八島は上手だった。
正直言えば、その指摘の方法も
「あら、ちょっと難しかったかしら」
「それは楽しかったみたいね」
と、香澄が特に言葉にして訴えてもいないのに、ちゃんとその時の香澄の感情に則って声がけをしてくれていた。
だから思っていたのだ。
(この人、エスパー……!?)
などと。
そうして。
夜の10時くらいまでリアルタイムでどんどんスプレッドシートを埋めていった時のことだった。
そのやりとりが一瞬途切れることになったのは。
「あら、やだ」
「どうしました?」
「ちょっと電話かかってきちゃった」
「あ、出てきてください」
「わかった。こっちミュートにしておくから、香澄はそのまま課題やってなさい。……今日は寝かさないから覚悟しておきなさいね」
「……が、がんばります……」
そうして、八島がいない間。
(ミュート、ということはこっちの声は聞こえてない、ということであってるよね?)
そう考えた香澄は
「こんなセリフを言わせたい」
と頭の中に思いついたものを、ポツポツ声に出しながら、そのセリフに合うシチュエーションを選ぶ方法に切り替えた。
実は、いつもの香澄は、声に出してから耳で聞き、頭で考えるという手法をしていた。
目で覚える、考えるより、耳で聞く、覚える、考えるのプロセスの方が、香澄は得意だったから。
でも、八島にそれを聞かれるのが恥ずかしかったので、このタイミングまではじっと香澄は黙っていたのだ。
(やっぱり、声に出した方がすんなり頭に入る)
そうして、ブツブツと声を使って、時々妄想演技を入れながらスプレッドシートを入力していると、気がつくと1時間経っていた。
シチュエーションの量は、すでに1000は超えていた。
「先輩……遅いな……」
いつもなら、もうベッドに入る時間だった。
「もう、寝ちゃってもいいのかな……」
どちらにしても、頭がぼーっとしていて、これ以上は考えることはできなさそうだと香澄は思った。
その時だった。
「お待たせ」
スピーカーから声が返ってきたのは。
まず、合宿の1日目。
スタートは朝10時から。
最初は、八島が普段使ってる参考文献を教えてもらったり、その本の中の1冊について座学という形で講義をしてもらった。
それから、12時になりお昼ご飯。
いつもダイニングテーブルにノートパソコンごと移動して、いつもの準備をして食べ始めた。
本音を言えば、香澄は食事の時間だけは、極力八島とは繋ぎたくなかったが
「その時間でしかできないトレーニングもあるわ。それに、1度くらいは私とランチして頂戴よ」
と、言われてしまったので、そういうのは早い方がいいだろうと考え、最初のランチタイムをその時間にした。
ランチ1つから、色々な物語ができる。
まず今食べているものについて、簡単なショートストーリーを作れと言われてしまい、流石に困った。
私が作っているものは、毎日同じものばかり。
私の日常そのもの。
それを、魅力的なストーリーにするなんて、どう逆立ちしても無理だと香澄は思った。
でも、八島は
「そんなありきたりな日常を、美しい絵画にするのが画家よ。フェルメール、後でググっておきなさい」
アドバイスついでにさらっと課題を追加してくるので
(あ、この人鬼だな)
と香澄はこっそり思った。
午後になってからは、有名な恋愛映画を2本ぶっ続けで見てから、1本スリラーサスペンスを見た。
どちらも、感情を大きく揺さぶってくるもの。
どんなシーンで、自分の感情が揺れ動いたかをきちんと記録しろと言われた。
あるキスシーンについて
「ベロチューって苦しそう。三次元であれするの大変そう」
という感想を書いてみたら
「情緒なさすぎ、やりすぎ」
バッサリ切られた。
そんなやりとりが繰り返されてから、次は夕食。
これはいつも通り、いつものように食べるだけ。
だけど、ランチに教わったこと実践するようにと言われたので、やっぱりいつも以上に味がしない夕食になった。
画面共有は、この次。
涼が言った通りの課題が出された。
ネットや本、ありとあらゆる媒体を使って、ロマンチックなデートができる場所を書き出せ。
100でも200でも。何だったら1000以上でもいい。
場所の数だけ、出会いもロマンスもある。
人の数だけシチュエーションが存在する。
それを量こなして体に染み込ませろ。
それが八島が香澄に課した、課題の目的だった。
画面共有をさせていた理由としては、スプレッドシートの入力や調査の仕方をリアルタイムで見ながら、都度的確にチェックを入れるため。
逆に言えば、八島がそうまでしないといけないくらい、香澄にはその部分の土台が圧倒的に足りないということ。
「うん、その場所なら盛り上がりそうね」
などと選び方を褒めてくれるかと思えば
「香澄、公園のベンチだけ書くんじゃなくて、そこから何が見えるのか、聞こえるのかまでちゃんと意識しなさい。高校生がたむろってる中でロマンチックなキスができると思うの?」
想像力の欠如をバッサリと指摘される。
そんな飴と鞭の使い分けも、八島は上手だった。
正直言えば、その指摘の方法も
「あら、ちょっと難しかったかしら」
「それは楽しかったみたいね」
と、香澄が特に言葉にして訴えてもいないのに、ちゃんとその時の香澄の感情に則って声がけをしてくれていた。
だから思っていたのだ。
(この人、エスパー……!?)
などと。
そうして。
夜の10時くらいまでリアルタイムでどんどんスプレッドシートを埋めていった時のことだった。
そのやりとりが一瞬途切れることになったのは。
「あら、やだ」
「どうしました?」
「ちょっと電話かかってきちゃった」
「あ、出てきてください」
「わかった。こっちミュートにしておくから、香澄はそのまま課題やってなさい。……今日は寝かさないから覚悟しておきなさいね」
「……が、がんばります……」
そうして、八島がいない間。
(ミュート、ということはこっちの声は聞こえてない、ということであってるよね?)
そう考えた香澄は
「こんなセリフを言わせたい」
と頭の中に思いついたものを、ポツポツ声に出しながら、そのセリフに合うシチュエーションを選ぶ方法に切り替えた。
実は、いつもの香澄は、声に出してから耳で聞き、頭で考えるという手法をしていた。
目で覚える、考えるより、耳で聞く、覚える、考えるのプロセスの方が、香澄は得意だったから。
でも、八島にそれを聞かれるのが恥ずかしかったので、このタイミングまではじっと香澄は黙っていたのだ。
(やっぱり、声に出した方がすんなり頭に入る)
そうして、ブツブツと声を使って、時々妄想演技を入れながらスプレッドシートを入力していると、気がつくと1時間経っていた。
シチュエーションの量は、すでに1000は超えていた。
「先輩……遅いな……」
いつもなら、もうベッドに入る時間だった。
「もう、寝ちゃってもいいのかな……」
どちらにしても、頭がぼーっとしていて、これ以上は考えることはできなさそうだと香澄は思った。
その時だった。
「お待たせ」
スピーカーから声が返ってきたのは。