二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
(あれ、話し方変わった?)

 始め、香澄はほんの少しだけ何か違和感を感じた。
 でも、その違和感の正体に気づけるほど、この時はまだ、香澄は八島のことを知らなかった。
 それに、この時の香澄は、1日中ずっと考えっぱなしだったこともあるのか、頭がふわふわしていた。
 ほんの少し油断すれば、すぐに夢の世界へ誘われる。
 そんな状態だったので、次々と問いかけられる質問に対して、反射的に答えるので香澄は精一杯だった。

「この中で、君はどんなシチュエーションが好き?」
「どんなセリフ囁かれたいの?」

 香澄の記憶の片隅に、そんなことを言われたような……という曖昧な音声が残っているくらいだった。
 このやりとりが、自分の創作トレーニングだと分かっていた香澄は、自分ではなく読者やプレイヤーが楽しんでもらえるシチュエーションは何か……という視点で色々話した気がしていた。
 でも、その具体的内容はほとんど覚えていない。
 ただ、自分が何かを話すたびに

「それは面白いね」
「素敵だね」

 と、ただ繰り返し褒められたことだけは覚えていた。
 香澄にとっては、そんな風に無条件に誉められたのはだいぶご無沙汰だった。
 父と祖母が、もういなくなってしまったから。
 だからだろうか。
 すごく、嬉しくて幸せだと、香澄は思っていた。
 心が温かくなるような、ほんの少しくすぐったいような、そんな不思議な気持ちが残ったような気はするが、それが何故かは、香澄には分からなかった。
 そうして。
 気がついたら香澄はPCの前で突っ伏していて、窓の外から太陽の光が差し込んでいたのだ。
 いつ、どのようにして1日目が終わったのか、香澄は全く分からないまま……。
 そして……それから1時間後。
 八島からZOOMを使うように指示が入った。
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