二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「ど、どどどどういう……」

 何故、八島としか話をしていないはずの内容を、涼が知っているのか。
 香澄は、八島に助けを求めるように視線を送る。
 八島は

「ああっもう!全部あいつのせいよ!」

 と、綺麗な髪を手でかきむしりながら地団駄を踏んだ。

「あ、あいつ……?」
「たっくんの元カレだっけ」
「うるさいわよ!人の恋愛事情まで把握してるとか、どこまでもきしょいわね……!」
「随分と別れ話、拗れてたみたいだけど」

 香澄は、自分を間に挟んだ状態の言い合いから、少しずつ情報を整理し始める。
 あの課題の時、八島に電話をかけた人が八島の元カレ。
 その事実を、涼は知っている。
 その電話が拗れた事実も。
 そして、拗れるということは、恐らく時間がかかったということ……。
 いや、そもそもそれが問題じゃないことに香澄はもっと早く気づくべきだった。

「あの……涼……さんってもしかしてあの日……八島さんの近くにいた……んですか?」

 恐る恐る、香澄は尋ねた。
 涼はじっと、香澄を見ながら悪戯っ子が時たま見せる笑みを浮かべながら

「よく気づいたね、香澄」

 と言いながら香澄の前髪を払った。
 まるで、そこにすぐにでもキスを落としたいという、意思表示のように。
 だが、それを

「よく気づいたね、じゃないわよ!!」

 八島の叫びが遮った。
 少し、涼の口元が歪んだのが香澄にも分かった。
 それくらい、香澄と涼は近い距離でお互いを見つめあっている体制になっていたから。

「そもそも何であの日あの時間、ここになんか来たのよ!そうじゃなかったら……香澄の存在をあんたに知られることなんかなかったのに」
「仕方がないじゃないか。困ったことになってたんだから」

 涼は、香澄の前髪を払いながらふうっとため息をついた。
 その口元に、香澄は男性の色気を感じた。

「どうせ、あんたの家に女が侵入してたんでしょう」
「よく分かったね」
「っ!?」

(お、女が侵入……!?)

「それ、何回目よ」
「さあ」

(さあって……!?)

 普通、1回でも死ぬまで残るトラウマレベルの事件だ。
 その回数を聞かれて「さあ」と答えるということは、何度も繰り返されているという事なのだろうか、と香澄は考えて身震いした。
 自分の家に、もし人が侵入でもしてきたら、きっとその場で気を失って殺されているだろう……と、香澄は思った。
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