二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「私が……教えた……?」
「そうだよ」

涼は香澄の顎に手を当てて

「君が憧れるデートの中に、普段行ってる喫茶店で一緒にケーキを分け合いたいって言ってたかな」
「ヒィッ」

(一体、どこまで話してたの私……)

 確かに、香澄には心当たりがあった。
 時々あの喫茶店に来る老夫婦が、お互いのケーキを一口ずつ食べさせ合う姿を見て「こんな風に仲が良い家族だったら楽しいんだろうな」と妄想をしたことはあったのだ。

「どんな喫茶店なのか、特徴を教えてもらったから、後は心当たりを探すだけでよかったんだけど……」

 涼はそう言いながら、八島を見てニヤリと笑う。

「たっくんがわざわざ、僕に見つかりやすいように痕跡を残してくれたからね。店のマスターに教え子っていう言葉さえ使わなければ、きっと僕はまだあの喫茶店には辿り着けなかったと、思うけど?」

 八島は、大きなため息をつき、頭を抑えた。

「香澄ちゃん、ほんとごめんなさいね」
「あ、あの……」
「私の不注意のせいで、あんたがこの地域を生活圏内にしているだろうっていう推測を立てられてしまってね……こいつが喫茶店で何度か待ち伏せしようとしてたのよ。それで、香澄に喫茶店で仕事はしないでって言ったのよ」
「な、なるほど……?」
「香澄ちゃんが家から出るなんて滅多にないから」
「うっ」
「喫茶店にさえ来させなければこいつと遭遇することはないから……それで済むと思ってたのよ。だけど、よりにもよってあなたからあんな相談されるから……」
「相談……?」
「恋愛の件よ!まさかたった2ヶ月前のこと、忘れたんじゃないでしょうね」
「あ……ああ……」

 香澄の頭に、ディレクターに心抉られた12月頃の記憶が蘇り、ゲンナリした。

「確かに、香澄のシナリオライターとしてのスキル向上のためには恋愛経験を積むのも必要だと思ったのも事実。であれば……そこの詐欺師以外の、まともな男性と恋愛することができれば一石二鳥だと思ったのよ」
「一石二鳥……ですか?」
「獣払いもしっかりできて、香澄ちゃんもシナリオライターとして一皮むける!」
「僕は獣扱いかい?」
「下半身使いたい放題が、偉そうに言ってんじゃないわよ」
「香澄に汚い言葉聞かせないでくれるかな」
「どの口が言う、どの口が!!」

 結局当時の香澄は、その方法は死んでも無理と考えたので、別プランとして用意してくれた「セックスしそうなカップルを観察する」という方法に切り替えた訳だが。

「ねえたっくん」

 そう言うと、涼は、香澄を抱き寄せる手に力を込めた。
 涼の体温をますます感じて、香澄の心臓はまた1つ大きく跳ねた。

「僕もね、確かめないといけないことがあると思ってたんだ」
「……あら、どうぞ」

(もうこれ以上何かあると言うのか)

 フランス料理コースが一通り終わって、イタリアンを食べさせられている気分が、香澄はした。

「あの、クリスマスイブのあのクソ面倒な見合いは……たっくんが仕組んだことだったんだろ?香澄と僕を何としても会わせないために」
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