90日のシンデレラ
 (やっぱりそうよね、いつまでも笑っているし)
 (この天井のことと一緒なんだ)
 (ドライブのお返しのことを、私が真面目に反応したから、おかしかったんだ)

 愚直に生きていることは悪いとは思わない。だがこれは、時と場合によっては融通の利かない堅物女に落ち着いてしまう。都会の人間からすれば、今の真紘の真面目さは信じられないレベルなのかもしれない。
 自分が悪いわけではないと思う一方で、真紘は少し心が軋む。感性の違いとはいえ、これは田舎者がうける一種の洗礼なのかもしれない。

 黙って真紘が待っていれば、北峰の笑いが収まってきた。
 最後に大きく息をついて、北峰はおもむろにドアを開けて運転席から降りていく。そのままスタスタと歩いていった。

 (?)

 歩いていく先はすぐ近くの、とあるスリムなポールのところ。街灯の明かりでほんのり照らされている。地上から一メートルほどの高さのそのポールは、なにやら上部が四角く膨らんでいる。郵便ポストを細くしたようなシルエットだ。
 謎のポールに何やら操作して、北峰は戻ってきた。手にはひらひらとした紙切れを持って。
 そして戻った先は、運転席でなく真紘のいる助手席側だった。

 どうするのかと観察を続けていれば、北峰は助手席のドアを開けた。そして、
 「どうぞ。送っていくよ」
 と、真紘にエスコートの手を差し伸べた。

 「そんなに離れているわけでもないから、いいです」

 キス騒動でからかわれた手前、どうも素直になれない。帰り道がわかってもいれば、さっさと北峰と別れてしまいたい。真紘は、ばつの悪い時間を早く切り上げたくて仕方がなかった。
 でも、北峰は認めなかった。

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