90日のシンデレラ
 やってきた電車に乗り、これまたふたり並んでシートにつく。手が離れたのは、列車に乗るときだけ。着席と同時に北峰は真紘の手を探し、しっかりと確保する。
 どちらへいくのですかと真紘が尋ねたら、特に北峰は行き先を告げない。ただ買い物に付き合ってもらうよと返すのみ。
 もともと真紘は買い出しに出ていたので、北峰と合流することで真紘の目的が変わってしまったわけでない。
 北峰は依然、しっかりと手を握っている。地下鉄特有の暗い車外を眺めれば、窓ガラスが鏡面となってふたりの姿が映っていた。

 (これ、はたからみれば、どう映っているのかしら?)
 (北峰さんはいいとして、私、とりあえずスカートって感じなんですけど……)
 (ルックスに差がありすぎる。不釣り合いなカップルだよ~)

 窓ガラスに映るふたりの姿は、一見ただの相席の大人にみえる。カップルではなく、通りすがりの他人というのが一番しっくりくる。でもこのふたり、手を繋いでいるから、見た目と反して周りの人はそうは思わないだろう。

 窓ガラスの中の自分は、イケてない独身女子だなぁと真紘は思う。地理情報がわからずキョロキョロするばかりの「おのぼりさん」そのまんまだ。
 こんな冴えない自分の姿を見つけて、嫌がうえでも真紘は認識してしまう。とにかく並んだ真紘と北峰の画があまりにもちぐはぐ(・・・・)であると。
 初デートで浮かれるなんてこと、そんなの真紘の中にまったく起こらなくて、ただただイケメンの北峰と一緒にいれば恥ずかしいだけ。

 こんな真紘とは対照的に、北峰はご機嫌だ。電車に揺られながら、初デートプランを提案する。

 「プレゼン用の新しいスーツを作るんだけど、その店はカフェも併設しているから、そこで昼ごはんにしようと思う。いい?」
< 133 / 268 >

この作品をシェア

pagetop