90日のシンデレラ
 (あの部屋に住みやがってと思ったが、考えようによっては俺は運がいいかもしれない)
 (あれだけ脅えているんだ、こっちに干渉するようなことはないだろう)
 (問題は、椎名が素直に間借りを認めるかどうかだ。一応、俺は男で、向こうは女だからな)

 そう計算付けば、即実行だ。
 業務改善コンペのローンチ終了すぐに、まだ部屋に残るエントリーメンバーに所用だといって瑠樹は席を外す。まっすぐに真紘のあとを追いかけた。親近感を抱かせるために「シーナちゃん」と呼びかける。
 そんな企てが瑠樹の頭の中で渦巻いていたとは、当然、真紘は知らない。ただ「やっと終わったよー」と、のんびりとエレベーターを待っていたのであった。



 最初に予定が狂ってしまえば、それはいつまでも後を引く。そう、子供の手をひねるようなものだろうと思っていたのに、真紘の行動パターンは全然、瑠樹の上をいっていた。

 (意外に強情だったな)
 (あの頑なさはレポートに通ずるものがある。やっぱりあいつが書いたようだ)
 (それはそうとで、まずは部屋が確保できた)

 エレベーター内で間借り申し入れの件を、強引に認めさせたあとの瑠樹の感想である。
 一、二回の「困ります」という返事は想定内であったが、真紘の場合、一、二回では落ちなかった。仕方がないから、「うん」というまでエレベーターから出さないことにした。
 もし真紘が系列入りの日の浅い孫会社の社員でなく、古くからある子会社社員であれば、もっとスムーズに話は通ったかもしれない。でもそれはそれで、余計な恋愛問題(ラブ・アフェアー)を引き起こす可能性を否定できない。

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