90日のシンデレラ
 (……食器? それって、やっぱり揃いの食器よね)
 (なんか、同棲しているみたい)
 (まぁ一応、お付き合いしているし)

 ぽんと目の前に、瑠樹が取り分けたパスタをおく。どうぞといわれて、素直に真紘はいただくことした。
 フォークにパスタを絡めて、余ったフォークの先にあさりを刺しつける。それを口に放り込んで、真紘は目が大きくなった。

 (え!)
 (嘘!)

頬っぺたが落ちるというのは、こういうことなのだろうか?

 「美味しい」

 意図せずして、真紘は声が出る。

 ネギとオリーブ油の風味が口の中に広がる。あさりとパスタはガーリックと白ワインでしっかりと味が引き締められていて、噛みしめればどんどんその味わいが濃くなっていく。塩加減だって、辛くもなく薄くもなくジャストだ。

 「すごい! 計量スプーンは使っていないのに、お店みたいな味!」
 と、真紘は絶賛した。真紘の瞳は、ただただ至高のボンゴレに心揺さぶられた驚きの色しかない。
 飲食店の味なんて一般家庭で再現できるなんて思っていなかったら、この瑠樹のパスタは奇跡の一品にしか思えないのだ。

 「塩加減は個人差が大きいからどうかなと思っていたけど、ご満足いただけて幸いです」
 などと瑠樹だって、真紘の感想にレストランテのシェフのように返す。そういう彼の口元は口角が少し上がって、「うまくいった」と満足な瑠樹の心を代弁している。

 「北峰さんて何でもできて、すごいな~」
 「真紘」
 「あ、瑠樹さんは何でもできて、自慢のカレシです」

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