90日のシンデレラ
 真紘のことを「面白い」といって、今のところ瑠樹は真紘に興味を抱いている。なまじその「面白い」は、いい意味で彼を期待を裏切り、ここまでやってきた。
 だが今晩は、逆に作用するかもしれない。真紘の「面白い」が悪い意味で瑠樹を裏切るのだ。そうなれば……
 そうなれば、真紘はひと晩のカノジョで終わってしまう可能性が大いにある。
 深く思考する前に、「コーヒーはいかが?」なんてセリフをいってしまったことを、真紘は後悔した。

 「真紘、せっかくだけど、いい」

 コーヒーの提案を、さらりと瑠樹は断った。

 「いいって?」

 コーヒータイムなんてまどろっこしい時間を飛ばしてことに及ぶのかと、真紘は身構える。

 「あーそれは、来週に出張が入っていて、明日は前日移動することになっている。なので、今日はこれまで」
 「え? ここまで? それに出張って?」
 「出張は海外。朝一で羽田から飛ぶよ」

 そういいながら、瑠樹は帰り支度をはじめる。玄関横の部屋へいき、スーツを一着選び出して、ガーメントバッグに詰めはじめた。
 興味のままに真紘は瑠樹を追いかけて、そのカレシの様子を黙って見守っていた。
 ひととおりの仕度ができると、入り口で佇む真紘に瑠樹はこういった。

 「真紘、そう、つまらない顔をしない。かわいい顔がブスになる」

 ブスといわれて、真紘はまた目が丸くなる。単に様子をみていただけなのに、瑠樹からそう評される。

 (私、そんなに不満そうな顔をしていた?)

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