90日のシンデレラ
 真紘としては本社出向のメイン目的は企画開発研修なので、ほどほどの段階で業務改善コンペの落選を望んでいた。一回目で落ちるのは、流石に田舎の孫会社に悪い。かといって、最後まで残ってしまえば、真紘の能力では業務過多となってしまう。
 そういうふうに望んでいたのだが……
 先週末に、その事情が変わってしまった。

 (コンペ落ちちゃうと、瑠樹さんとの接点が減っちゃうんだよね)
 (瑠樹さん、忙しいから、コンペは貴重な接点だもの)
 (とても気合が入っていたのに、大村さん、ダメだったんだ。としたら、私も落選か?)

 いつかの大村と瑠樹のミーティング姿を思い出す。仲睦まじく、コーヒー片手に、熱い議論を交わしていた。
 そのときは真紘はまだただの部下だったから、少々ちくりと胸を刺すものがあるものの、まだ「ふうん」ぐらいで流すことができた。
 でも今は、少しホッとするような感じがする。なぜなら、大村が落選することで、彼女と瑠樹の親し気な姿をもう見なくて済むから。

 「椎名さん、今日もレポート提出ですか?」

 お取込み中申し訳ありませんが、という感じでマダム山形が割って入ってきた。
 大村の件ですっかり真紘は、自分の用件がおろそかになっていた。

 「はい。こちらを持ってきました」

 昨日仕上げたレポートを、マダム山形へ差し出した。
 ふむふむと、それを横から大村が覗き込む。そして……
 「あー、子会社連携関係か~。こっちのほうが確かに関係者も多いし、広がり方も大規模だ~。私のは関係部門が狭いからね、だから落選か―」
 と、コンペ落選理由を推測した。

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